国語については、前回、物語がメインディッシュだと書きました。


この物語に次いで国語の授業で時間がかけられているのは、説明文の授業です。

 

説明文とは、ある題材について客観的に説明したり、筆者の意見を論理的に述べたりする文章の総称です。

(後者の文章については、論説文という別の名前で呼ぶ場合もあります)

 

有名なものには、例えば「さけが大きくなるまで」「アーチ橋の仕組み」「人類よ、宇宙人になれ(論説文)」などがあります。

 

物語が情緒に訴え感動を誘う文章だとすれば、説明文は理性に訴え事実や意見を伝える文章です。

言い換えれば、物語は文学的文章であり、説明文は実用的文章です。

 

説明文は、私たちの生活においてとても身近なもので、至るところで目にするものです。

新聞や雑誌の記事、電器製品の取扱説明書、職場のマニュアル、自治体の広報、学校からのお便りなどなど、数え上げれば切りがありません。

 

子どもたちの教科書にしても、算数、理科、社会、家庭科、保健など、国語以外のものはほとんどすべて説明文で成り立っているのです。

 

書店にある本にしても、文学書以外の本のほとんどが説明文で成り立っています。

新書やハウツー本などは、その典型です。

たった今、みなさんが読んでいるこの文章も説明文です。

 

  このようなわけで、説明文の読解力は、現代社会を生きていく上で欠かせない能力なのです。

いろいろな場面で遭遇する説明文を的確に読み取ることができなければ、生活や仕事に支障を来すことにもなりかねません。

 

ましてや、「情報」の持つ価値がさらに高まると言われている高度情報化時代においては、その重要度はいよいよ高まることが予想されます。

インターネット上の文字情報も、そのほとんどが説明文なのですから。

 

このような認識のもと、学校の国語の授業でも、このごろは説明文が重視されるようになってきました。

 

では、これから身につけるべき説明文の読解力とは、どのようなものなのでしょうか?

子どもたちにどのような力をつけていけばいいのでしょうか?

 

私は、その1つ目として、細部を読み取る力を挙げたいと思います。

たとえば「会員で会議に出ていた人のほぼ3分の2が賛成したそうです」という文を読んだとき、次のことを読み取る力です。

・会員が全員会議に出たわけではない

・会議に出たのは全会員のどれだけの割合かは分からない

・3分の2が賛成と言っても、全会員の3分の2を意味するのではない

・「ほぼ」だから正確ではない

・「そうです」だから自分で見たのではない

 

このような細部を読み取る力は、実生活で取扱説明書やマニュアルを読むときにも、とても大切です。

ほんの少しの読み間違えで、物事がうまくいかなくなってしまうこともあるからです。

 

2つ目として、部分を要約しながら読む力を挙げたいと思います。

要約というとすごく難しく感じるかも知れませんが、実は、誰でもやっていることなのです。

 

 誰でも、文章を読むときには、ここはこういうことだな、ここで言いたいのはこういうことだな、などと自分なりにまとめながら読んでいるのです。

それでないと、そもそも文章の内容を頭に入れながら読み進めていくことはできないのです。

 

それに、読んだものを一定期間記憶しておいたり、その内容を自分なりに加工して話したり文章を書いたりすることもできないのです。

 

でも、誰もがやっていることではあっても、その能力には差があります。

この能力が優れていればいるほど、文章の内容をよく理解することができます。

 

特に、長い文章を読む場合にはそうです。

この能力が弱いと、部分的には理解できても、全体として何を言いたいのか理解することができにくくなります。

 

3つ目として、文章の構造を理解しながら読む力を挙げたいと思います。

つまり、ここは筆者の問題提起だな、ここは筆者の意見とその理由だな、ここは新たな問題の提起だな、ここが一番言いたい結論だな、などと意識しながら読む力です。

 

これができるためには、先ほどの、部分を要約しながら読む力が欠かせません。

部分を要約しながら、そして、構造を理解しながら読むことで、初めて筆者の言いたいことの全体を的確に理解することができるのです。

  構造を考えないでただ漠然と読んでいると、今読んでいるところが全体の中でどのような位置づけなの分からなくなってしまいます。

場合によっては、1つの部分の理解が、かえって筆者の意図と反対の結論に導びいてしまうことにもなりかねません。

 

では、どのようにしたらこの3つの力をつけることができるのでしょうか?

その一番の答えは決まり切っています。

それは、ずばり、説明文をたくさん読むことです。

つまり、読書です。

前回の物語のときと同じで、これには疑う余地がありません。

 

でも、読書以外にも、教科書の説明文教材を使ってこれらの力をつけ、説明文に強くする方法があるのです。

それについて、紹介したいと思います。

 

まず、1つ目の細部を読み取る力をつけるには、どうしたらいいのでしょうか?

それには、子どもが宿題でその説明文を音読するときを利用するといいのです。

 

子どもが読み終わったところで、質問してやるのです。

たとえば、「『会員で会議に出ていた人のほぼ3分の2が賛成したそうです』と書いてあるけど、賛成した人は会員の半分より多いの?」などと問題を出してやるのです。

 

すると、ただ漠然と読んでいた子どもは絶対に答えられません。

そこで、改めて1つ1つの言葉を吟味しながら考え始めます。

これは、細部を読み取る力を付けるのにとてもいい方法です。

 

学校の授業で先生が出す問題にも、このような意図があるのです。

子どもたちは一通り読んで内容が分かったつもりでいるのですが、問題を出されて初めて、実は何も分かっていなかったことに気がつくのです。

そこから、子どもたちは考え始めるのです。

 

いい問題は、子どもたちの興味を駆り立て、頭をフル回転させます。

そして、今まで見過ごしていたことに目を向けさせます。

 

先生がいい問題を作れたときは、いい授業になります。

家で問題を出すときにも、できるだけいい問題を出してやってほしいと思います。

 

家で音読するときに親子のマンツーマンでこれをやれば、子どもの力は間違いなく伸びます。

子どもが親の問題を楽しみにするようになれば、しめたものです。

慣れてきたら、子どもの方から問題を出させるのもおもしろいでしょう。

 

2つ目の、部分を要約しながら読む力をつけるには、どうしたらいいのでしょうか?

それを考える前に、学校ではどのようにしているか見てみましょう。

 

学校では、段落ごとにその内容を一言でまとめて、表やノートに書くというやり方をします。

または、小見出し(こみだし)をつけるというやり方もあります。

これを、数個の段落が集まってできる大段落ごとに行う場合もあります。

 

  家でやる場合はここまでできないかもしれません。

でも、もっと簡単な方法があります。

子どもがある部分を読んだら、「そこをまとめるとどういうこと?」とか「一言でまとめるとどういうこと?」などと聞いてやるのです。

 

いきなりそれでは無理という場合は、まず親が見本を見せてやるといいでしょう。

「そこをまとめると、動物も生物の一種ということだね」というようにです。

 

なお、これをやるときには、気をつけることがあります。

それは、内容的に区切りになるところで聞いてやらなければならないということです。

区切りにならないところで聞いても、まとめることはできないからです。

 

  3つ目の、文章の構造を理解しながら読む力をつけるには、どうしたらいいのでしょうか?

それを考える前に、説明文の典型的な構造はどうなっているのか見てみましょう。

 

説明文の一番典型的な構造とは、次のようなものです。

 

1・前書き、

2・問題提示、

3・筆者の回答や意見、

4・まとめや結論

 

説明文にもいろいろありますので、実際にこのようになっているとは限りません。

特に多いのが、2と3が繰り返し出てくるタイプです。

 

でも、一見複雑に見えても、よく見るとこの典型的な構造の応用になっている場合が多いのです。

学校で勉強する説明文も、ほとんどがこの典型的な構造の応用で書かれています。

 

子どもが音読しているときに、「ここは問題を出しているんだね」とか「ここは筆者の意見だね」などと教えてやることから始めるといいでしょう。

だんだん慣れてきたら、先ほどのように、問題を出したり出されたりというようにしていくといいと思います。

 

このようなことを少しずつでも続けてください。

説明文は1年間に4つくらい勉強しますので、続けていれば、だんだん説明文の構造についての理解が深まっていきます。

 

そうすれば、教科書以外のいろいろな説明文を読むときにも、自分で構造を意識しながら読めるようになります。

こうなれば、かなり読解力が身に付いたと言えるのです。

 

ここまでできたら、さらに、説明文の構造をもっと詳しく意識させていくこともできます。

次のようなことを意識させながら読ませるといいでしょう。

 

・客観的事実と主観的意見を見分ける・・「ここは事実かな、それとも書いた人の意見かな?」「自分の意見を事実のように見せかけているところはどこか、分かるかな?」

 

・意見とその理由や証拠や例示を見分けたり、その有効性を考えたりする・・「この例で、何を言いたいのかな?」「この例は、意見の証拠として相応しいと思う?」

 

このように、親子で知的なゲームとして楽しめれば最高です。

もちろん、いきなりは無理ですが、毎日の音読の際に少しずつ鍛えていけば可能です。

 

こうやって身につけた説明文の読解力は、その子の一生の宝になります。

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