この「勉強のポイント」の連載をお読みくださるみなさんは、「子どもが勉強を好きになって欲しい」「勉強ができるようになって欲しい」と願っていらっしゃると思います。

これは、親なら誰でも持つ切なる願いだと思います。

 

では、どうしたらそれが可能になるのでしょうか?

私は、この願いに近づくためには、親が次のようなことを知ることが大切だと考えます。

 

・子どもは学校でどんな勉強をするのか?

・なぜ、その勉強をするのか?

・その勉強のポイントは何か?

・子どもはどこでつまずくのか?なぜ、つまずくのか?

・どう教えればつまずかずに済むのか?

・勉強が好きで得意になるために、家庭で親にできることは何か?

 

今6つ挙げましたが、これらの中でも、とくに「勉強のポイント」を知ることが大切です。

というのも、ほかのすべてがここに集約されるからです。

 

これらのことは、みなさんが子どもの教科書を見ればある程度はわかります。

でも、本当に大切なポイントは、なかなかわからないと思います。

 

はっきりいって、1年生の算数ひとつ取っても、本当に大切なポイントはなかなかわからないはずです。

というのも、それには教育の専門的な知識が必要だからです。

 

たとえば、1年生の足し算を例に見てみましょう。

 

みなさんは、1年生で初めて足し算を学ぶ子に「6+8」のやり方を教えるとき、次の3つの中のどの教え方がいいと思いますか?

また、その理由は何ですか?

 

「6+8」の小さい方の6を4と2に分解して、8と2を足して10にし、10と残りの4を足して14にする。(とにかく小さい方を分解するやり方)

 

「6+8」の後ろの方の8を4と4に分解して、6と4を足して10にし、10と残りの4を足して14にする。(とにかく後ろの方を分解するやり方)

 

AとBのどちらでも、その子がその都度選べばいい

 

  私は、Aのやり方で教えるべきだと考えています。

なぜなら、それが一番簡単だからです。

Bのやり方だと、「4+8」や「3+9」などで大苦労することになってしまいます。

 

また、Cのように自分でやり方を選ぶというのも、子どもに無用の混乱をもたらすことになります。

そして、「4+8」や「3+9」などをBのやり方でやろうとして大苦労する子が出てきます。

しかも、算数が苦手な子ほどそうなることが多いのです。

 

このようなことがあるにも関わらず、私が調べた6つの教科書のうち、Aの教え方をしているのは1つしかありませんでした。

なんと、5つの教科書がCの教え方でした。

さすがに、Bはありませんでしたが。

 

つまり、大人はちょっとした教え方の違いだと思っても、教わる子どもにとってはとても大きな違いだということです。

そして、ポイントをしっかりつかんでおかないと、子どものためにならないどころか、かえって足を引っ張ることになるということです。

 

次に、1年生の引き算を見てみましょう。

たとえば、「15-8」のような繰り下がりのある引き算にも、次のような2つのやり方があります。

 

A減加法(1)15を10と5に分ける

    (2)10から8を引いて2・・・減法

    (3)5と2を足して7・・・加法

 

B減減法(1)8を5と3に分ける

    (2)15から5を引いて10・・・減法(あるいは8から5を引いて3)

    (3)10から3を引いて7・・・減法

 

大人であるみなさんは、どちらでやっていますか?

そして、子どもにはどちらで教える方がいいと思いますか?

 

この教え方の違いも、初めて引き算を学ぶ子どもにとっては大きな違いなのです。

 

では、次に、1年生の引き算の文章問題を見てみましょう。

実は、引き算には大きく分けて3種類あるのですが、みなさんは気づいていましたか?

 

たとえば、次の3つの文章問題は、1年生の1学期に勉強する引き算の問題です。

どれも結局は引き算になるのですが、文章問題の種類は全部違います。

 

1,いちごが7こあります。5こ食べました。後何こありますか?

2,子どもが9人います。男の子が4人なら、女の子は何人ですか?

3,男の子が6人、女の子が8人います。どちらが何人多いですか?

 

この中で、子どもにとって一番簡単なのは「1」の種類で、ほとんどの子が難なくできます。

でも、「2」の種類は少し難しくなり、つまずく子が出てきます。

そして、「3」の種類はけっこう難しくて、つまずく子が増えます。

 

このとき、引き算の文章問題に3種類あることを知らなかったり、子どものつまずきを漠然と見ているだけだったりすると、「この子は引き算が苦手なようだ」という判断しかできません。

 

それで、すでにできる「1」の種類の問題ばかりたくさんやらせて、肝心な「2」や「3」の種類の問題はほとんどやらせないということになりかねません。

実際、多くの親がこうなってしまいます。

 

というのも、一般的に、引き算というとすぐ「1」の問題が頭に浮かぶのが普通だからです。

それに、「1」の問題は作るのも簡単だからです。

 

では、次に、1年生の補数の勉強を見てみましょう。

この場合の補数とは、「足して10になる数」のことです。

たとえば、7といったら3が補数であり、4といったら6が補数です。

  実は、この補数を瞬時に言えるかどうかで、「繰り上がりの足し算」と「繰り下がりの引き算」のスピードが決まってきます。

 

ですから、当然、その後の中学年や高学年でやる足し算、引き算、掛け算、割り算などのすべての計算のスピードのスピードもこれによって決まってきます。

 

でも、これほど大事な勉強なのに、ほとんどのひとは1年生で補数の勉強があることすら知らないはずです。

ですから、家庭でもあまり練習することがないまま過ぎてしまいます。

 

とくに、「繰り上がりの足し算」や「繰り下がりの引き算」などが苦手な子は、この補数の練習を徹底的にすることが大切です。

 

瞬時に言えるようにするという点で、九九もまた極めて大切です。

しかも、「8×7」「3×9」のように順不同で出てくるバラバラ九九に瞬時に答えられるかどうかが計算力に決定的な影響があります。

 

中高学年で計算が苦手な子は、この九九の習熟が不十分なことが多いのです。

ですから、2年生や3年生の段階で、九九が一応全部言えるというレベルではなく完全制覇のレベルまでに高めておく必要があるのです。

 

でも、九九がどれほど大切かが今ひとつわかっていないひとも多く、また、ほかにもやるべきことがたくさんあるということで、子どもが九九を完全制覇するまでやらせないで終わってしまう場合が多いのです。

 

このように、算数の大切なポイントを知っていれば、子どものつまずきを未然に防ぐこともできますし、最少の努力で最大の効果を出すこともできます。

 

ここまで算数の例を見てきましたが、これは算数以外のどの科目にも当てはまります。

国語の漢字の勉強にしてもそうです。

 

親は、漢字というと書き取りをさせることしか頭に浮かばないと思います。

でも、書き取りだけでは漢字を覚えることはできないのです。

 

それどころか、無理にたくさんやらせれば漢字が嫌いになるだけです。

漢字を得意にさせるにも、ポイントやコツがあるのです。

 

国語の読解力についてもそうです。

多くのひとは、読解力をつけるには読書しかないと考えています。

 

もちろん読書は極めて大切です。

でも、読書以外にも、毎日出る宿題の音読で読解力をつける方法もあるのです。

 

国語の作文についてもそうです。

作文というと、普通は何か大きな行事や特別に楽しいことがあった後で書くものと感じているひとが多いと思います。

でも、本当はもっと気軽に日常的に作文に親しむことができるのです。

 

理科の植物の勉強についてもそうです。

学校では、1年生から6年生に至まで、毎年何らかの植物を栽培したり観察したりします。

そして、学校で栽培すると同時に、家でも栽培や観察をすることも多いと思います。

 

でも、それぞれの学年において、その栽培や観察の目的はかなり違っています。

ですから、その目的を理解していないとせっかくの栽培や観察もピンぼけになってしまいます。

 

社会の環境や公害の勉強についてもそうです。

社会科の中で、環境や公害の勉強の重要度は年々大きくなってきています。

でも、なぜ、この勉強をするかが本当にわかっていないとやはりピンぼけになってしまいます。

 

この勉強では、「なぜ、この勉強をするのか?」についての理解が本当に大切です。

教師、親、子ども、誰にとっても大切です。

 

それがわかっていないと、4大公害病の原因や場所を暗記したり地球温暖化の影響を10こ覚えたりという類のことで終わってしまいます。

本当は、そんなことよりもっと大切なポイントがあるのですが。

 

以上、この本の概要をざっと紹介しました。

私は、この本によって親であるみなさんが「どの勉強にもポイントがある」ということを理解してくれることを願っています。

 

そうすれば、子どもの勉強を見るときにも、まずポイントを見抜こうという意識が働くようになります。

そうなれば、この本で扱わなかった勉強についても、みなさんが自分でポイントを見抜けるようになります。

 

本書でポイントを見抜くコツをつかみ、さらに「ポイントを見抜こう」と意識しながら見るようにすれば、教育の専門家でなくても小学生の勉強のポイントを見抜くことはできるのです。

 

それによって、「子どもが勉強を好きになって欲しい」「勉強ができるようになって欲しい」という願いの実現に近づくことができるはずです。

テストの点も上がり成績もよくなるはずです。

 

そして、それはもちろん、大切なことです。

でも、それだけではありません。

勉強のポイントを理解して臨むことで、子どもの心を豊かにしたり人生の歩み方そのものにいい影響を及ぼしたりすることにもなります。

 

たとえば、「公害と環境」の勉強のポイントを正しく理解すれば身勝手な行動はできなくなるというようなことが実際にあるのです。

こういうことは、とても大切なことです。

 

本連載にはそのような実例もいくつか挙げてあります。

みなさんも、勉強のポイントを見抜こうとするとき、そのような観点も意識しながらやってみてください。

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