子どもが食後の歯磨きを忘れたとき、あるお父さんはこう言ったそうです。
「食べ終わったらすぐやることって何だったかな~。あ~、思い出せないよ~。さっきまで覚えていたのに忘れちゃったよ~。あ~、何だったかな~」。
お父さんは、変顔をつくったり頭を抱え込んで身もだえしたりしながら言ったそうです。
すると、子どもが「歯磨きだよ! パパ忘れちゃったの?」とうれしそうに言いながら洗面所に走っていき、歯を磨き始めたそうです。
それで、お父さんは「そうだった。ありがとう。助かった。お父さん、また忘れるかも知れないから、忘れてたら教えてね」と言いながら自分も磨きました。
普通だったら、「ちゃんと磨かなきゃダメだろ」と叱ってしまいそうな場面です。
でも、ユーモアを交えながら楽しくやらせることもできるのですね。
このお父さんは、日ごろから1日1回は子どもを笑わせるようにしているそうです。
いつも上から目線で子どもを叱ってばかりの親には、思いもよらないことだと思います。
そもそも、ユーモアはサービス精神の表れです。
そして、サービス精神は相手を尊重する気持ちが根底にあってこそ生まれてくるものです。
ですから、子どもを一人の人間として尊重できる大人だけが、子どもに対してユーモア精神を発揮できるのです。
「なんで子どもを尊重する必要があるのか。子どもなんて叱ってやらせればいいんだ」と思っている大人にはできないわけです。
子どもはユーモアのある大人が大好きです。
そういう大人なら子どもの気持ちを尊重してくれるということを、本能的に知っているのでしょう。
そして、子どもは、自分を尊重してくれた相手に対して尊重をもって対応するようになります。
ユーモア精神を発揮する上でもう一つ必要なのは心の余裕です。
ですから、何でもかんでも抱え込まず、やるべきことを精選し、生き方をスリム化して余裕を生み出しましょう。
また、逆に、ユーモア精神を発揮することで心の余裕が生まれてくるということもあります。
ですから、怒りを爆発させて叱りそうになったときこそ、何か面白い伝え方を考えて実行してみるといいと思います。
初出『聖教新聞』(2012年3月23日から連載)
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