小学校の教師をしていたときのことです。
家庭訪問や面談で「お子さんは学校でよくがんばっていますよ」と伝えると、家の人から「家ではいつもだらだらしていて、やるべきこともやりません」という反応が返ってくることがよくありました。
みなさんの中にもそう感じている人が多いと思います。
でも、家でだらだらするのは極めて当たり前であり、健全なことなのです。
大人でも、みんな外でがんばって家ではだらだらしています。
外でがんばって家でもがんばるというのはたいへんです。
子どもも外ではけっこう苦労しているのです。
たとえば、日々の授業で学ぶことは、大人にとっては既に知っていることばかりで簡単ですが、子どもにとっては初めて知るような新しいことばかりで、とにかく難しいのです。
それが毎日続きます。
しかも、つねに先生が見張っていて、サボれば叱られます。
授業だけでなく、掃除、係活動、当番の仕事、高学年になれば委員会や児童会の仕事など、あれこれ気を張ってやらなくてはなりません。
休み時間には子ども同士で過ごしますが、これもまた楽しいことばかりではありません。
いばる子やルールを守らない子もいますし、馬の合わない子もいます。
嫌なことを言われることもありますし、けんかに巻き込まれることもあります。
放課後は、児童クラブ、スポーツ少年団、塾、習い事など、またあれこれ気を張ってがんばらなければなりません。
朝に家を出てからこれらの荒波を乗り越えて、やっと家に帰ってくるのです。
だらだらしたくもなります。
ですから、家ではリラックスさせてあげてください。
それで初めて外でがんばれるエネルギーが充電できるのです。
家で親にガミガミ言われ続けていると、充電どころではありません。
外でがんばることなどとてもできません。
それどころか、ためこんだストレスのせいで友達とのトラブルも増えますし、授業にも集中できません。
また、イライラしていると視野が狭くなるので、交通安全の面でもたいへん危険です。
初出『聖教新聞』(2012年3月23日から連載)
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