親なら誰でも子どもを正直な子に育てたいと思っていると思います。


でも、その気持ちが強すぎると逆効果になってしまうことがあります。

 

私が知っているあるお母さんは、子どものちょっとしたウソ、ごまかし、ズルを絶対許さない人で、子どもが少しでもウソをつこうものなら厳しく問い詰めて叱りつける人でした。

 

あるとき、子どもが学校からのお便りを親に渡し忘れて、二日ほどカバンの中に入ったままになっていました。

その子は三日目に気づいておそるおそる渡したのですが、お母さんは何か怪しいと感じて「これいつもらったの!」と強い調子で聞きました。

 

それで、子どもはつい「今日もらった」と答えてしまいました。その態度が怪しいと感じたお母さんは、本人に問い詰めましたが「今日もらった」の一点張りで埒があきません。

 

業を煮やしたお母さんは、クラスのほかの子に聞いてウソだということを突きとめました。

そして、子どもが二度とウソをつかないようにと徹底的に叱りつけました。

 

このお母さんほどでなくても、これに近い人はけっこういます。

そして、そういう人はウソについてだけでなく、ほかのしつけ一般についても厳しすぎることが多いようです。

 

こういう親と過ごさなければならない子どもは、とても息苦しい毎日を送ることになります。

つねにびくびくして、自分を守るためにかえってウソをつくようになります。

 

子どもを正直に育てたいと思ったら、ウソをつかなくてもいいようにしてあげることが大切です。

心が広くて寛大で、明るくてユーモアがあり、ミスや失敗など笑って許してくれる、そういう親なら子どもは安心して生活できます。

 

先生に叱られたこと、友達とけんかしたこと、テストでひどい点を取ったこと、やるべきことをサボったことなど、なんでも正直に話すことができます。

 

信頼と安心が土台にあるからこそ、心を開いて正直でいられるのです。

恐れをもとに押しつけられた正直など、決して本物にはなり得ません。

他者を恐れる気持ちが身についてしまい、心を開けなくなるからです。

 

初出『聖教新聞』(2012年3月23日から連載)

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