私は、若いころ、細かくて厳密な漢字指導をしていて、ちょっとでも教科書の字と違うとバツをつけていました。

それが子どものためだと思っていたからです。

でも、ある時、いき過ぎた厳密さは漢字嫌いを増やすだけだと気がつきました。
バツばかりもらっていれば、嫌いになるのは当たり前です。

そして、漢字について調べているうちに、自分がこだわっている「とめ」「はね」「はらい」なども、必ずしも絶対的なものではないことを知りました。

例えば「窓」という字を例にすると、日本の漢字使用のもとになる常用漢字表には、この5画目は「とめ」でも「はね」でもいいし、4画と5画が片仮名の「ハ」のようになってもいいことが明記されています。

でも、これらのどの書き方でもいいというと、子どもたちが混乱するということで、学習指導要領の学年別漢字配当表の字体である「教科書体」を標準にして指導することにしたのです。

そして、その表では「窓」の5画目はとめてあるので、各社の教科書もそうなり、授業でもそう教えるようになりました。

その経緯からすれば、「窓」の5画目がはねてあるのをバツにするはおかしいのです。

でも、「テストは教えたことが身についたかを調べるもの」(文科省の見解)なので、バツになることが多いのです。
こういう例はたくさんあります。

もともと子どもたちの負担を減らすための措置だったのに、現状は、その字体にこだわりすぎて、重箱の隅をつつくような指導で子どもたちの負担を増やしています。

もちろん、いい加減に書くことを推奨するつもりはありませんが、このような経緯を理解した上で適切な指導をしていくことが大切だと思います。

初出『Smile1』(学研エデュケーショナル)

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