子供に指導や指示や注意をするときは、プラスイメージの言葉遣いをするように心がけることが大切です。

マイナスイメージの言葉遣いだと、言われた方は良い気持ちがしないものです。

例えば、次のような言い方です。

食器を置くときは静かに置かなくちゃだめでしょ。
朝は早く起きなくちゃだめでしょ。
字を丁寧に書かなくちゃだめでしょ。
布団くらいちゃんとたためないの?
そんなこともできないの?
言われないとできないの?
靴下を脱ぎっぱなしにしないこと!
テレビゲームばかりやってちゃ、だめ。

このような言い方がマイナスイメージの言葉遣いです。
全て否定的な言い方です。
言われると、とてもいやな気持ちになる言葉です。
「だめ」という言葉がたくさん出てきます。

また、これらの言い方の多くに「な(na)」という音が入っています。
「ない(nai)」「なく(naku)」などがそれです。
英語で言えば「not」(ノット)であり、ドイツ語では「night」(ニヒト)です。

不思議なことに、ほとんど世界中の言語で、否定後にはこの「n」の音が付くそうです。
「n」の音は唯一口を開かずに発音できる音なので、相手に心を閉ざす表現の時に使われるようになったということです。
相手に心を閉ざすときは、口も閉ざしたいのが人間なのでしょう。

つまり、無意識の内に、人間は「n」という音の持つ深い意味を感じ取っているのです。
そういうわけで、人間は、「ない」とか「なく」という言葉にはあまり良い感じを受けないのです。

ですから、先に挙げたようなマイナスイメージの言葉は、聞き手に良い感情を引き起こすことができません。
理屈は言われた通りと分かっても、感情面が納得しません。
したがって、素直に言うことを聞こうという気にはなれないのです。

それどころか、その「n」の音をたくさんぶつけてくる相手にあまり良い感情を持たなくなってきてしまいます。
また、マイナスイメージを与えられ続けることでマイナス思考になっていってしまいます。

では、どのような言い方がプラスイメージの言葉遣いなのでしょうか?

食器を置くときは静かに置くと上品だね。
朝は早く起きると気持ちが良いよ。
字を丁寧に書くと段々上手になるんだよ。
布団をきれいにたたむと気持ちが良いね。
○○君ならできるよ。
言われる前にやるともっと良いね。
靴下を脱いで、洗濯機に入れてくれると助かるよ。
テレビゲームは段々減らせると思うよ。

先程の言い方と比べてみてください。
内容は同じですが、言い方一つで、受けるときの印象がずいぶん違うと思います。

ところで、これらマイナスイメージの言葉遣いとプラスイメージの言葉遣いの間に、もう一つ単純形があります。

食器は静かに置きなさい。。
朝は早く起きること。
字を丁寧に書きましょう。
布団をきれいにたたんでね。
言われる前にやりましょうね。
靴下を脱いだら、洗濯機に入れてください。
テレビゲームは少なくしよう。

これらの単純形も、時には必要でしょう。
単純形の方が、マイナスイメージの言葉遣いよりよほどましです。

その際、「しなさい」ばかり多用すると、相手はまた良い気持ちがしません。
ですから、「○○すること」「○○しよう」「○○して」「○○しましょう」「○○してください」などの言い方を使い分けることをお薦めします。
同じ単純形でも強弱があります。
時には強い言い方を、時には柔らかい言い方をというように、時と場合で使い分けることが大切です。

我が子だからといって、相手の気持ちを無視したものの言い方をしてはいけません。
それは親の奢りであり、甘えであり、エゴです。
相手を尊重したものの言い方、言葉遣いをしてください。
それが子供に伝わり、子供もこちらを尊重するようになります。
相手を遇した同じやり方で、こちらも遇されるのです。
なぜなら、親子といっても人間関係の一種であることにかわりはないからです。

さあ、今から、子供に指導や指示や注意をするときは、プラスイメージの言葉遣いをするように心がけましょう。
それが無理なときや適さないときは、単純形を使いましょう。
これを実践するだけで、親子の人間関係もずいぶん違ってくるはずです。


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