小学6年生で、子供たちは初めて歴史の勉強をします。
6年生を受け持つと、いつも感じるのですが、6年生の最初の子供たちの歴史に対する興味と知識にはとてつもない差があります。

中には、6年生で歴史の勉強をやるのを、5年生の頃から心待ちにしている子もいます。
私の今までの経験だと、それはほとんどの場合、男の子でした。
大体の数字で恐縮ですが、35人のクラスだとすると、そういう子が3人くらいいました。

そして、その子たちに共通することが、4,5年生の頃から歴史漫画を読んできたという事実です。
歴史漫画は、子供たちの大好きな漫画という形式で、歴史を生き生きした人間の物語として楽しませてくれます。
そこでは、実際に顔を持つ生き生きとした表情の登場人物たちが大活躍する姿を見ることができます。

縄文人たちが家を造ったり土器を焼いたりする姿が、詳しく描かれています。
聖徳太子が治世に心くだく様や悩む様が、とても詳しくその心の中まで見えるように描かれています。
義経が合戦で大活躍する場面や頼朝の策略が見事に成功する場面が、一大スペクタクルで描かれています。
秀吉が知恵を働かせ出世していく様子が、子供たちの興味をそそるように描かれています。昔の武士の戦う様子、百姓たちの苦悩する姿が微細なところまで描かれています。

例えば、ある会社の教科書と比べてみます。
秀吉の記述の最初の部分は次のように書かれています。
「信長の有力な武将であった秀吉は、信長の死後、すぐに明智光秀をたおし、8年で全国の大名を従えました。」

このような文章が教科書の文章です。
教科書とは元々このような記述のものだと思いますから、私は何も教科書を批判しようとは思いません。

ですが、上のような文章で、生き生きした人間の物語として歴史を捉えさせることは不可能でしょう。

「信長の有力な武将であった秀吉は、信長の死後、すぐに明智光秀をたおし、8年で全国の大名を従えました。」という部分が、歴史漫画では何十ページにも渡って描かれています。
何十人もの人物が登場し、悩み、苦しみ、笑い、会話をし、戦いをし・・・というように生きる人間の姿として描かれています。

4,5年生の頃から、このような歴史漫画を読んできている子供たちは、歴史を躍動する人間の物語、ドラマとして捉えることができるのです。
無味乾燥な事実の羅列としてではなく、実際の人間の生身の姿として捉えることができるのです。

さらに、、歴史漫画に含まれている情報の量は半端ではありません。
6年生の歴史の教科書に含まれている情報の量をはるかに凌駕しています。

小学6年生の歴史の教科書は、どの会社のものも約110ページです。
わずか、110ページです。
しかし、歴史漫画は一つのシリーズで10巻から15巻くらいあります。

教科書では、豊臣秀吉について大体2ページくらい割いています。
しかし、歴史漫画では1冊丸ごと豊臣秀吉というものもあるくらいです。

ですから、先程の「8年で全国の大名を従えました」の部分ももっともっとはるかに詳しく知ることができます。
例えば、どのような意図でどの大名と戦いどの大名と和睦したかなどという点も、学べます。

それと、あまり知られていないことですが、どの歴史漫画でも歴史の研究者を監修者に迎え、史実にも時代考証にも細心の注意を払っています
例えば、鎌倉時代の武士の鎧と戦国時代のそれとはかなり違いがあるのですが、それをきちんと描き分けています。
人々の服装はもちろん、その住まいや持ち物一つにも時代考証をして描いています。

このように素晴らしい歴史漫画を4,5年生の頃から読んできている子供たちは、もう既に歴史の知識をかなり持っています。
それが自信に繋がり、学校での歴史の勉強が楽しくなるのです。

ですから、私は、4,5年生から読ませることをお薦めします。
そうすれば、6年生になったときに大いに自信を持って歴史の勉強に臨めます。

以上のような子供たちと反対に、6年生になるまで歴史には全く縁がなかったという子供たちもいます。
なまじ知識があるより、そういう子供たちの方が6年生でやる歴史の勉強に新鮮さや驚きがあって良いのではないかなどと言う人がいるかもしれませんが、それは実情を知らなさすぎる空論です。
私はそれには大反対です。

私の経験だと、そのような子供たちは大きく分けて二つのタイプに分かれます。
歴史に4月の最初から苦手意識を持ってしまい、全くやる気をなくすタイプが1つ目です。
次は、初めて学ぶ歴史に興味を持って取り組むタイプです。

しかし、予備知識が全くないと、どんどん進む勉強になかなか付いていけないものです。
最初の新鮮さだけで、付いていくのはかなり難しいのが実状です。
なぜなら、人名も地名も事件も専門用語も次から次へと出てくるからです。

豊臣秀吉の名前すら初めて聞くような子が、「明智光秀、武将、大名、一向一揆、石山本願寺、大阪城、朝廷、関白太政大臣、検地、年貢、刀狩り令、城下町、明、薩摩焼き、有田焼き、朝鮮の水軍、亀甲船、李舜臣」などという言葉の内容をどんどん理解していけるはずがありません。

これらの言葉のほとんどが、多くの子供たちにとっては今まで見たことも聞いたこともない言葉なのです。
多くの子供たちにとって、全くのちんぷんかんぷんなのです。
ちなみに、これらの言葉は豊臣秀吉を扱ったわずか2ページの間に出てくるのです。

一切歴史の知識がない子供たちが、最初の新鮮さや驚きだけで、あまりにも一気に出てくるこれらの新知識に対応できるはずがありません。

さて、今回はまず匿名希望の読者の方からのメールをご紹介します。
次に、私こと親野智可等の回答も紹介させていただきます。

以下引用===================================

初めまして。小学5年生の男子の母です。
参考になるのでいつも楽しみにしています。

ところで、今回のテーマの歴史漫画について
実は私もそろそろ子供に漫画の物で親しみを持たせようと考えていましたが
色々有りすぎてどの本が適当なのかよく分かりません。
そこで、おすすめの本をメルマガで掲載して頂けませんか?
お忙しいところ勝手なお願いですが宜しくお願いします。
以上引用===================================

すばらしいご提案をありがとうございます。

初めは、人物を中心に扱ったものがとっつきやすいと思います。
つまり、奈良時代とか平安時代などという区切りでかかれたものよりも、聖徳太子とか豊臣秀吉などという人物に焦点を当てたものです。

また、男の子でしたら、やはり戦国時代のものがお薦めですね。

例えば、武田信玄、上杉謙信、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康などですね。
特に、昔も今も、子供たちが読んで面白がるのは豊臣秀吉でしょうね。
全く裸一貫からのしあがる波瀾万丈の物語ですから。
男の子にはたまらないでしょう。

女の子にはやはり、最初は女性を扱ったものが良いと思います。

まず、卑弥呼ですね。
それから、推古天皇、紫式部、清少納言、北条政子、日野富子、細川ガラシヤなどですね。

関連のある人物を芋蔓式に読むのも良いかもしれませんね。

源頼朝、源義経、平清盛、北条政子などを続けて読めば、平安末期から鎌倉初期までの歴史がほとんど頭にはいるでしょう。

坂本龍馬、西郷隆盛、大久保利通、勝海舟、徳川吉宗、福沢諭吉などを続けて読めば、幕末から明治初期までの歴史がほとんど頭にはいるでしょう。

そして、だんだん、時代で区切ったものなども読み始めると良いですね。

もう一つ、読者の方からのメールと、私こと親野智可等の返事を紹介させていただきます。
メールをくださったのは風林火山さんです。
「>」のところが風林火山さんのメールです。

> いつもためになるメールマガジンをありがとうございます。
> さて、小学5年生の男子ですが、漫画本はまったく興味がないようです。
ゲームの本は毎月、定期購読しているくらい、興味があり、知識もかなり深いものをもっています。
しかし、それ以外の本はまったく読みません。
> それで前回、教えてもらったように夜に寝るときに図書館でかりてきた本を読んでやっています。
読んであげると関心はあるようです。

それはとっかかりとしては、大収穫ですね。
気長にやることが大切です。
一気にというわけにはいかないと思いますよ。
ぜひ続けてください。

今日やったから明日結果が出るというものではありませんが、必ず、子供のプラスになります。
たとえ、目には見えなくても、です。

>でも漫画はばかみたいといって図書館でかりることをいやがります。
そういう場合は日本の歴史、世界の歴史での有名な物語を寝るときに読んで見せるようにするしかありませんか?
漫画がばかみたいといっても漫画はおもしろいといって読んでやっていれば関心がでてきますでしょうか?

歴史への興味を持たせるという点では、
漫画だけでなく、NHKテレビの大河ドラマも良いですね。
歴史を扱ったテレビやビデオも結構あります。
博物館に連れて行くのも良いですね。
寝るときに、歴史関係の話を読み聞かせるのは最高に良いですね。

まあ、焦らずあの手この手でやってみることですね。
あまり結果を求めないことです。

最終的には、諦めるというのも一つの立派な選択です。
人間は何でもかんでも興味を持つというのは無理なのですから。
別に「歴史」が全てではないのですから。

その子にはその子の関心の傾向や資質があるのですから。
親ができることはいろいろやってみて、それでだめなら諦めることです。

他の面で伸ばしてやれば良いのだと思います。


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