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(本連載を1冊にまとめました)
いくら能力が高くてもいい人間関係がないとそれを生かすことができません。
生活も仕事も一人ではできないからです。
そして、いい人間関係をつくっていくために絶対必要なのが人を信頼する力、つまり他者信頼力です。
人を信頼できない人、つまり他者への不信感が強い人はいい人間関係をつくれないことが多いのです。
私が教えた子の中にも、「この子は人への不信感があるのではないか」と感じさせる子がいました。
そういう子は、例えば廊下で子ども同士ぶつかったりすると「何するんだ。やるのか」という対応になりがちです。
子ども同士で何か協力して活動する場面でも、トラブルを起こしがちです。
人を信頼できる子は、誰かとぶつかれば自分から「ごめんね。だいじょうぶ?」と言えますし、友達とも仲よく協力できます。
これらの違いは人間関係をつくっていくうえで決定的に大きな違いになります。
では、人を信頼できるようにしてあげるにはどうすればいいのでしょうか?
その第一歩は親を信頼できるようにしてあげることです。
というのも、親子関係は子どもにとって一番最初の人間関係だからです。
親を信頼できた子は、その後の人間関係も同じように信頼をもとにつくれるようになるのです。
では、親を信頼できるようにしてあげるにはどうすればいいのでしょうか?
大切なのは親の言葉と行動です。
まず、親が絶対言ってはいけないのは「お前なんかいない方がよかった」などその子の存在を否定する言葉や、「お前はずるいやつだ」などの人格を否定する言葉です。
こういう言葉は子どもの心を深く傷つけ親への不信感を植え付けます。
ところで、存在否定や人格否定はしない親でも、「また歯を磨いてない。どんどんやらなきゃダメでしょ。なんでちゃんとやらないの」など、物事についての否定的な言葉はけっこう使ってしまいがちです。
でも、こういう言葉も度重なれば存在否定や人格否定と同じように子どもの心を傷つけ親への愛情不足感や不信感につながるのです。
親はこれらの言葉を避け、「○○するといいよ」「○○するとうまくいくよ」などの肯定的な言い方に心がけ、それが無理なときはせめて「○○しよう」などの単純な言い方にとどめましょう。
同時に、子どものほめられるところを積極的に見つけ出して、たくさんほめてあげるようにしましょう。
この連載の六回目に、ほめられると自分に自信がつき自己肯定力が育つと書きましたが、同時にほめてくれる相手への信頼感も育つのです。
親の行動でまずいのが自業自得方式、言い換えると冷たい放任主義です。
例えば、「忘れ物をして困れば、懲りて自分で直すだろう」ということで、忘れ物の多い子に何の手助けもしないで放っておく親がいます。
でも、こういうやり方では、子どもは直るどころか忘れ物を繰り返して自信をなくすだけです。
そして、困っている自分に何の手助けもしてくれない親に対して、愛情不足感や不信感を持つようになるのです。
子どもが苦手なことは、親が優しく手助けしてあげることが大切です。
それがあってはじめて、子どもは苦手なことも少しずつできるようになっていくのです。
また、それによって親の愛情を実感できるようになり、親への信頼感も育ってくるのです。
初出『子ども英語ジャーナル』(アルク)2011年12月号
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