今現在、私は小学1年生の担任です。
今年は2人の学級生活支援員さんが毎日交代で我がクラスにいてくれましたが、2人とも
本が大好きな方だったので、一日2冊くらいずつ読んでくれていました。

支援員さんの任期が終わってからは、私が毎日10分くらいずつ読んでいます。
近頃子供が喜んだのは、「ソメコとおに」「三年寝太郎」「ふたりはいつも」などです。

私は、以前に2回1年生を受け持ったことがありますが、その時はほぼ毎日紙芝居をやりました。
紙芝居と読み聞かせは似ていますが、いくつか相違点もあります。

以前の2回の時も今回も、私のクラスの子供たちは自分でもとてもよく本を読みます。

今日もかなりの腕白小僧さんが、暇を見つけて食い入るように絵本を読んでいました。
給食の支度の途中のふっと空いた時間にも、たくさんの子供たちが絵本を読んでいます。

ですが、4月からそうだったわけではありません。
子供たちが自主的によく本を読む姿が見られるようになったのは、2学期くらいからです。
3学期には、ほれぼれするくらいよく読むようになりました。

私と2人の支援員さんで、これは毎日の読み聞かせの成果に違いないと話し合い、喜び合いました。

読み聞かせこそ、子供を本好きにするための王道です。

小学校で、大人数相手にやってもこれくらいの成果があるのです。
小さい頃から、お父さんやお母さんの膝の上で本の世界に浸ることができる子は本当に幸せです。

では、なぜ読み聞かせは子供を本好きにするのでしょうか?

それは、読み聞かせによって本の世界の楽しさを味わえるからです。
絵を見たり耳で聞いたりして、実際には目の前にないことを想像する楽しさを、味わえるからです。

わくわくしながらお話の続きを待ちこがれる楽しさを、味わえるからです。
本の中にそういう楽しい世界があることを、教えてくれるからです。

読み聞かせをあまり体験していない子は、本の中に楽しい世界があることを実感として知りません。

そういう子が、書いてある文字をまだうまく読めないうちにいきなり自分で読ませられても、楽しさを味わうことはできません。

それを強制されれば、苦痛以外の何ものでもありません。

そして、文字を読み取って想像できる能力は、何歳だからとか何年生だからといったことで決まるのではありません。

ですから、もう小学3年生だから自分で読ませるというのではなく、その子に必要ならぜひ読み聞かせをしてやって欲しいと思います。

親子の人間関係にもよりますが、小学4年生くらいまでは、結構親の読み聞かせを喜んで聞いてくれます。

小学5,6年生でも、不可能ではないでしょう。

ですが、ちょっとそれはもう実際は無理だという場合も多いでしょう。
もう中学生だから無理だとか・・・
そういう場合はどうするか?

それは、次回にご提案するとして、もう一つ読み聞かせの大切な効用を書いておきたいと思います。

それはすばらしい時間を共有できるという点です。

例えば、私は、中学年を受け持ったときはよく「チョコレート工場の秘密」という長編物語を読み聞かせます。

恵まれないかわいそうな少年チャーリーに、チョコレート工場への招待状が当たるかどうかという場面では、子供たちは水を打ったような静けさで聞きい入ってくれます。

クラス中の子供たちが皆、チャーリーに感情移入します。
チャーリーが外れたと分かったときは、共に大きな落胆を味わいます。
そして、見事チャーリーが当たったときには、共に大喜びします。

高学年なら、「ああ、無情」を読み聞かせます。
ジャン・バル・ジャンがミリエル司教の感化で改心し、魂が浄化されていく過程は、思春期前期の子供たちの心に深く染み込んでいきます。

この長編を毎日少しずつ読み聞かせながら子供たちの表情や反応を見ていると、それがよく分かります。

特に、私が印象深い場面は、ジャン・バル・ジャンの本当の姿を知った刑事ジャベールが己を恥じて入水する場面です。

ここで、子供たちは尋常ならざる感銘を受けます。
物音一つ出ません。
この時間は、子供たちが人間の生きることの意味に思い至る得難い一時です。

このようなすばらしい時間を教師とクラスの全ての子供たちが共有できることは、読み聞かせの大きな効用の一つです。

このような感動の共有が、より親密な人間関係作りに資することは確実です。
ですから、読み聞かせや読書活動を柱とした学級作りも成果を上げるのです。

これは、当然、親子での読み聞かせにも当てはめることができます。
親子の場合には、これが更に深いものになります。

お父さんやお母さんの膝の上でその温かさや息づかいを感じながら、読み手と共に登場人物に感情移入したり物語の推移に一喜一憂したりする得難い時間は、まことに人生の至福の一時です。

これ程の濃密な時間の共有を可能にするものが、他にあるでしょうか?

共に過ごすこのような中身の濃い時間が親子の結びつきをより深いものにし、子供の人格形成に計り知れない影響を与えてくれます。

読み聞かせは、子供を読書好きにし言語能力の向上に資するという効用がありますが、実はそれ以上のものも与えてくれるのです。

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