前回は、「鉛筆の持ち方の実態」、「正しく持つことの大切さ」、「正しい持ち方の説明」について書いてきました。

では、もう既に間違った持ち方をしてしまっている子については、どうしたら良いのでしょうか?

まず、私は、自分の経験から軸が三角鉛筆をお薦めします。
普通の鉛筆は軸が六角形ですが、持ち方指導用に三角形の鉛筆が発売されています。

三角鉛筆は初めて鉛筆を持つ子にも、もう既に間違った持ち方をしてしまっている子にも
大変有効なものだと思います。

私自身、間違った持ち方をしていたので、直すときに三角鉛筆を使いました。
今でも、三角鉛筆の方が書きやすいくらいです。

この鉛筆だと、親指、人差し指、中指の三本を正しい位置に置いて鉛筆を持ったときに、とても指の納まりが良いのです。
三角形の3つの面にそれぞれの指がぴたりと密着して、安定感が出ます。

字を書くときにも、そのそれぞれの面から指がずれません。
ですから、正しい持ち方に慣れていない子も、比較的楽に書けるのです。

「公文」や「七田」で、持ち方指導用の三角鉛筆が販売されています。
検索サイトで「三角鉛筆」と入れて、検索してみてください。

一度試してみる価値は十分あると、私は自分の経験からお薦めします。
「公文」も「七田」も子供の鉛筆の持ち方を何とかしたいと真剣に考え研究した結果、同じ結論に達したのだと思います。

大したものだと思います。

念のために言っておきますが、私は、「公文」からも「七田」からも1円も頂いておりません。

三角鉛筆の次は、輪ゴムを使う方法をご紹介します。
これもよく行われているようです。

輪ゴムの使い方にもいろいろありますが、私がお薦めするのは次の方法です。
この方法は、鉛筆を中指の爪の根元に置くことができない子に適しています。

(1)輪ゴムを二重か三重にします。
(2)そこに中指を通して、中指の爪の根元のところに二重か三重の輪ゴムを留め置きます。
(3)輪ゴムと中指の間に鉛筆を中指の上の方から差し込みます。中指の爪の根元に鉛筆の削り際の部分が来る位まで差し込みます。
(4)「中指の爪の根元と親指の先でペンをはさみ、人さし指はペン軸の上にのせます。」(ここは、日本ペン習字研究会の説明通りです。)

あまり輪ゴムがきつすぎると、指が鬱血してすぐ痛くなってしまいます。
指の太さに合わせて、輪ゴムの長さや巻く回数を工夫する必要があります。

次は、鉛筆の持ち方矯正器具についてです。

これも、各種発売されています。
ですが、私自身いくつか試しましたが、今ひとつ使い勝手が良くなかったというのが正直な感想です。

ですが、全部試したわけではありませんので、中には良いものがあるのかも知れません。
どれも100円から200円くらいですので、いろいろ試してみるのも良いでしょう。

もしかしたら、その子の癖の矯正にぴったりのものがあるかも知れません。
というのも、持ち方の癖は千差万別だからです。

ここまで、鉛筆の持ち方を矯正する方法についていろいろ考えてきました。

ところで、私自身も、小学5年生か6年生のとき担任の先生に直すように指導を受けましたが、結局直せませんでした。

その理由を今思い起こして考えてみるに、私自身に直そうという気が全くなかったからだと思います。
それに、私は、その必要性を全然感じていませんでした。

教員になってから、初めてその必要性を感じ、自分自身で直す努力をしました。
ですが、直すのはなかなか大変でした。

今では、ほとんど直り、正しい持ち方で書いています。
ただ、それでも、疲れたときや少し気が抜けた状態で鉛筆やボールペンを握っているときは、子供の頃からの握り方に戻っていることがあります。

私は、自分が苦労したので、クラスの子供たちは正しい持ち方にしてやりたいと考えています。
それで、いつも、クラスの子供たちにかなりしつこく指導しています。

特に1年生を受け持ったときは、ここで直さなければという気になり気合いが入ります。
しかし、それでも、正直な話、完全に直る子は少ないと打ち明けなければなりません。

一応、どの子も正しい持ち方で書けるようにはなります。
「鉛筆の持ち方はどうかな?」
と授業中も頻繁に言っているので、みんな正しい持ち方で書きます。

ですが、私が言わないときや書くこと自体に没頭してしまっているときには、ほとんど自分流の持ち方に戻ってしまっています。

それを指摘すると、
「あっ、忘れてた。」
とか、
「そうだった。」
などと言って、子供たちは直します。

子供たちも、直したいとは思っているのですが、なかなか身に付かないのです。

子供たち自身が心から直したいと思ってくれるようにと考え、正しい持ち方の良さを話したりもします。
正しい持ち方で書いていると字がうまくなるよとか、姿勢が良くなるよとか、その効能を並べ立てます。

それでも、一度ついた癖はなかなか直せません。

さんざん書いてきて申し訳ないのですが、一度ついた持ち方の癖を直すのはかなり大変というのは、私の体験した事実です。
ですから、正直にお伝えしなければなりません。

それでも、指導によって、一応でも正しい持ち方で書けるようにはなります。
後は、その子次第、本人次第でしょう。

その子が、本当に直そうと思ったときにだけそれは可能になるのです。
その時、過去に少しでも正しく持って書いていたことがあるという経験は、無駄ではないはずです。

ということで、大人ができることは誠実にやりましょう。
でも、結果については、決して焦らず、イライラせず、気長に取り組みましょう。

それでもムリなら、諦めてください。
鉛筆の持ち方がヘンでも学力が高い子はたくさんいますので。
大人でもたいていの人は正しく持てていませんが、それでも何とかなっていますので。

直らないからといって、叱ってばかりいてはよくありません。
それだと、子どもは鉛筆を持って書くこと自体が嫌いになってしまいます。

ps

なお、書き忘れましたが、正しい持ち方で字を書く前に、その持ち方でグルグルと円を書きながら右へ移動していく渦巻き練習をするととても効果的です。

時計回りの方向で渦巻きを書いたり、その反対に書いたりすると良いでしょう。
その後は、1センチメートルくらいの縦線を何本も書きます。
続いて、横線、右傾や左傾のななめ線というように練習します。

これらの練習は、手や指のウォーミングアップになりますので、実際に字を書くときに手や指がうまく動くようになります。
と同時に、正しい持ち方で書くときに使う筋肉を鍛える上でも効果的です。
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