私が小学校の5年生か6年生の時に、学校で地球儀を作ったことを覚えています。
地球儀のプラモデルキッドを一人1個ずつもらって、みんな一生懸命作りました。

地図を印刷した紙が20枚くらいあって、それをプラスチックの球体に糊で貼り付けて作ったのです。
その様子を、今でもありありと思い出します。

完成したときは本当に嬉しかったです。
授業中勉強に使っただけでは飽きたらず、休み時間もそれで遊びました。
友達と国や大都市の名前を言い合って、探しっこをしました。

家に持って帰ったときは、台座から取り外して抱いて寝ました。

地球儀には、地図にない不思議な魅力があります。

中学生の時に、先生が「アメリカのミサイルは東西南北のどちらを向いているか?ソ連のミサイルは東西南北のどちらを向いているか?」という問題を出しました。
一般的な地図が頭にあった生徒たちは、私も含めて、「アメリカのミサイルはソ連の方つまり西を向いている。ソ連のミサイルはアメリカの方つまり東を向いている。」と答えました。

するとその先生はにんまりと笑いました。
そして、
「全然違う。アメリカのミサイルもソ連のミサイルも北を向いて、お互いに相手を狙っているんだ。」と言いました。

そして、地球儀を廊下から持ってきて、地球儀のてっぺん、つまり北極圏を生徒の方に向けて見せました。
すると、なるほど、北極圏とカナダをはさんでアメリカとソ連は向かい合っているのだということが分かりました。
へえ、アメリカとソ連はこんなに近いんだと、妙に感心したことも覚えています。
じゃあ、ソ連からアメリカに行く飛行機は北に向かって飛ぶんだなと思ったことも覚えています。

さらに、いつのことかは忘れましたが、日本を出発した飛行機は真っ直ぐ飛べばアメリカについて、さらにそのまま真っ直ぐに飛べばブラジルに着くという話を聞いたことがあります。
これも普通の地図をイメージしているとにわかに信じられない話ですが、地球儀でその道をたどってみれば納得します。

地図によって与えられている地球世界のイメージは、実際のものとはかなり違うのです。
私にとって地球儀は、いつも新鮮な驚きを与えてくれるものでした。

私は今でも時々暇なとき、地球儀をボーっと見ていることがあります。

そして、今の今まで知らなかった島や都市などを見つけて喜んでいます。
地球儀にたくさん引いてある船の航路をたどって、想像の船旅をします。
アフリカ大陸最南端の喜望峰と南アメリカ大陸最南端のホーン岬が、かなり近いことに驚きます。
太平洋を目の前に持ってくれば、見える部分はほとんど青い海です。
地球における海の圧倒的な広さを実感します。
そして、つくづく地球は水の星だと感心します。

ある時、部屋に入った瞬間に机の上にポツンと置いてあった地球儀が目に入りました。
その時、急に地球を愛おしく感じてしまいました。
こんな小さな玉の上にへばりついて、世界中の人たちが生きているんだなあと思うと、何となく切なくなりました。
宇宙の中の地球のはかなさは、部屋の中の地球儀のはかなさなど比べ物にならないくらいのものです。

世界中の人に仲良くして欲しいと、心から思わずにはいられません。
国だとか民族だとか言って争っているのが、本当に愚かしく思えてきます。

世界地図を作るとき、どの国も自分の国を地図の真ん中に置きます。
日本人は日本を世界の中心に置き、アメリカ人はアメリカ合衆国を世界の中心に置き、オーストラリア人はオーストラリアを世界の中心に置きます。
ですが、地球儀を見れば、世界に中心などないということが分かります。
どの国も世界の中心ではないということを知るのは、とても良いことです。

地球儀には、地図にはない不思議な魅力があります。
子供もそれぞれいろいろな発見をするでしょう。
それは、地理の勉強に役立つということ以上のものを与えてくれます。

これからの世界を生きる子供たちには、地球人という意識、地球市民という意識を持ってもらいたいと、心から思わずにはいられません。
親野智可等のメルマガ

親野智可等の本
遊びながら楽しく勉強
親野智可等の講演
取材、執筆、お仕事のご依頼
親野智可等のお薦め
親野智可等のHP