今、大きく時代が動き始めているという実感を多くの人が感じているのではないでしょうか?
いろいろな分野で、従来の枠組みや価値観が大きく変わりつつあります。
インターネットの一層の普及が、時代のうねりをさらに加速化することは、間違いありません。
今の時代を、明治維新や敗戦時の変革に匹敵するほどの大変革の時代という人もいます。
私も、そんな気がしています。
でも、浮かれてばかりはいられません。
このような時代には、えてして社会的に弱い立場のものが切り捨てられるのです。
私が以前受け持った子のお父さんはリストラされ、自殺しました。
残された家族とその女の子は、親戚を頼って引っ越しました。
お別れ会の日のその子の姿は、忘れられません。
私にできることは、その子を励まし、その後誰もいないところで泣くことだけでした。
公立小学校の同じクラスの中には、1週間のうち6日間習い事に行く子もいれば、朝食を食べられずに登校してくる子もいるのです。
夏休みに海外旅行に行く子もいれば、電気を止められた部屋でじっと過ごす子もいるのです。
家庭の経済状況は、子育てや教育に直接影響します。
経済格差が広がれば、子育てや教育の格差も広がるのです。
これから自己責任の時代がくると言う人がいます。
つまり、弱肉強食の能力主義の時代です。
自己責任と言われても、誰も彼もがうまくやれるわけではありません。
当然、うまくいかない人たちが出てきます。
つまり、2極化です。
経済的にうまくいかない人たちが増え、その結果、十分な子育てや教育ができない層が徐々に増えることが考えられます。
その結果、非行や犯罪なども増えるでしょう。
それを、私は憂えます。
それは、結局社会全体の損になるのです。
今、世界各地で起こるテロのために世界中が不安におびえています。
テロを防ぐとの名目で、膨大な資金と労力が使われています。
そして、人命すらも。
でも、このテロも結局は2極化の産物です。
2極化を食い止め、テロが起きないようにすることが大切です。
私たちは、現在の大きな変革の時代をどの方向に持っていくかが問われているのです。
弱肉強食主義で2極化の社会を作っていくのか?
それとも、自由に競争しつつも、一定レベルでの社会的なセイフティネットを確保していくのか?
これが今問われている一番大きな問題だと思います。
人は、自分たちだけ幸せになることはできないのです。
親は、自分の子供だけ幸せにすることはできないのです。
周りの子供も、大人も、みんなが幸せになれるような社会があってこそ、初めて幸せになれるのです。
ぜひ、子育て中の皆さんには、このことを頭の隅に置いて欲しいと思います。
そして、我が子を育てるときに、このような視点を常に持っていて欲しいと思います。
つまり、親自身が自分や家族や我が子のためだけに生きるのではなく、世のため人のためという価値観も持って生きて欲しいと思います。
そして、その中に、大きな喜びと誇りを見出して欲しいと思います。
イラクで亡くなった橋田信介氏の遺志を継いだ方々が、イラク人の少年モハマド君を眼の治療のために日本に招待したことがありました。
そのとき、ある子が「僕もお小遣いを寄付する」と言いました。
お父さんとお母さんが寄付の話をしていたのを聞いて、自分もやろうと思ったのだそうです。
私が受け持ったある子のお母さんは、よく身体障害者の団体でボランティア活動をしていました。
その子もときどき付いて行ってって介助のお手伝いをするそうです。
当然のことながら、その子は、本当によく気が付く子で、やさしくて、人の気持ちを思いやれる子でした。
あるお父さんは、得意な手品を生かして老人ホームを慰問していました。
息子もときどきついていっていたようです。
近くの公園のトイレを進んで掃除していたお母さんもいました。
その話をしてくれた子の顔は、とても誇らしげでした。
「僕のお父さんは、散歩しながらゴミを拾ってくる偉いお父さんです。」と作文に書いた子もいました。
あるお父さんは、フォスタープランでアフリカの子供を支援していました。
国境なき医師団に、毎月天引きで寄付している人もいました。
これらの人たちは、そのことに大きな喜びと誇りを見出しているのです。
こういうことは、一見遠回りのようですが、実は子供の生き方を大きく左右するものなのです。
親に、世のため人のためという価値観があれば、それは子供にうつります。
日常の些細な言動を通して、子供がそれを引き継ぎます。
こういう価値観を持つ人が増えることで、初めて社会全体が幸せになるのです。
弱肉強食による2極化の社会ではない、温かい人間らしい社会が作られるのです。
そうして、初めて、個人の幸せもあるのです。
決して、自分さえよければそれでよいという子にしてはいけません。
世のため人のためという価値観を持ち、そこに大きな喜びと誇りを持てる人になれるようにしてやってください。
そして、それは、ひとえに親の生き方にかかっているのです。
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