連絡帳に我が子のマイナス面を書きたがる親は、けっこうたくさんいます。
中には、毎日毎日これでもかというくらいに書いてくる親もいます。

これは、親としてはとてもまずい戦略だと思います。

八百屋さんが「うちの野菜は腐ってるよ」と言っているようなものです。
床屋さんが「うちはカットが下手だよ」と言っているようなものです。

そのようなことを毎日読まされていると、その子はそういう子なんだと思えてきます。
最初はそんなことはないと思っていても、だんだんそう思えてくるものです。
なんといっても、何年も育ててきた親が言っているのですから。
しかも、確信を持って。

子供を新しく受け持ったばかりの4月にこれをやられると、かなり早い段階でその子へのマイナスの先入観が担任の中ででき上がってしまいます。

なぜ親はこのようなことを一生懸命書くのでしょうか?
私は次のようなことが考えられると思います。

1つ目としては、その親の性格によるものです。
つまり、その人自身がマイナス思考の人だと、言うこと書くこと考えることが全てそのようなものになります。
それがたまたま担任への連絡帳という表現の場に表れると、上記のようなことになるわけです。

2つ目としては、親のストレス解消です。
子育てをしていてなかなか思うようにならないと、そのことを誰かに言いたくなるものです。
それによって、一瞬気持ちがすっきりするように感じるのです。
我が子のことで愚痴を聞いてくれる身近な存在として、担任の先生は恰好の相手というわけです。

3つ目としては、親の防衛本能の現れです。
つまり、あらかじめ言っておくことで、担任からの指摘によるショックを和らげたいという気持ちです。
どんな職場でも、「私には無理」とか「どうせ私は」というスタンスで仕事をしている人がいると思います。
そのような人たちは、あらかじめできないときの言い訳を発して自分を守っているわけです。
それと同じものが、子育ての場で表れると上記のようなことになるわけです。

私の場合は、本読みカードを連絡帳の代わりにしているので、そこに日々の子供の様子やそれについての親の感想なども書かれています。
それを読んでいると、その親の性格や生き方やそのときどきの心理状態もよく分かります。
そうです、そこには子供の姿だけではなく、実は親自身の姿も表れているのです。
これをお読みの方々も、試しに、自分が今まで書いたものを読んでみるといいと思います。
そうすれば、私が言っていることが分かるはずです。

これに気が付いてから、私は、親が書く子供の姿については割り引いて受け取れるようになりました。
ですが、以前は、けっこうまともに受け取っていました。
今も、多くの担任たちがそのようにまともに受け取っているはずです。

ここで誤解しないで欲しいのですが、本当に伝える必要があることはこの限りではありませんよ。
それに、そのようなことは、何かに書くより電話で話したり直接会って話した方がいいと思います。

さて、このように子供のマイナス面を書き続けることは、大きな損だということがお分かりいただけたでしょうか?
私は、親が取るべき戦略としては、この逆をお勧めします。
つまり、我が子のよい面を伝え続けるのです。
担任の先生に我が子をピーアールするのです。
例えば、次のように書くといいと思います。

「敬老の日におばあちゃんに手作り写真立てをプレゼントしました。我が子ながら感心しました」
「妹と留守番してくれました。妹の面倒をよく見てくれて助かります」
「今、そろばんの試験に向けてがんばっています。また1つ目当てを見つけたようです」
「毎日、洗濯物の取り込みをやってくれます。ときには、たたんでくれるときもあります」

あまり毎日でもわざとらしいので、3日に1回くらいがいいかもしれません。
その他の日は親のサインだけ書いてもいいですし、または、我が子の様子などをたんたんと書くのもよいでしょう。
とにかく、マイナス面を書くのを避けていればいいのです。

このようにプラス面を書くように努めていると、だんだん書いている親自身も我が子がすばらしく思えてきます。
一種の暗示です。
また、書くときに全くの嘘を書くわけにはいかないので、それらしいことを探すようになります。
つまり、我が子のいいところを見つけようと、意識しながら見ることになるのです。

このような子供のプラス面の情報を受け取っていれば、担任もだんだんその子がすばらしい子だと思うようになります。
そう思い始めると、その子のすることがなんでもかんでもよい方に解釈されるようになります。
これはなにも教師だけのことではありません。
人間は誰でも、思いこみによって同じものがどのようにも解釈されるのですから。
我が子がどのように思われた方が得かは、考えてみる必要もないくらい当たり前のことです。

それに、休み時間などに子供と話すとき、親からの情報をもとにする場合もあります。
例えば、ある子の連絡帳に「今日も弟を泣かしてしまいました」と書いてあったらどうでしょうか?
せっかくその子が休み時間に先生とおしゃべりしようと思って近くに寄ってきたときに、つい次のように言ってしまうかもしれません。
「昨日も弟を泣かしたんだって?○○君、お母さんも困っているようだよ。」

この反対に、連絡帳に「このごろお風呂掃除が上手になりました」と書いてあったらどうでしょうか?
次のように会話が弾むかも知れません。
「○○さん、お風呂掃除が上手になったんだって、お母さんも喜んでいるよ。何か、コツでも見つけたの?」
「見つけた、見つけた。湯船で一番汚れている水際のところを最初に洗うといいんだよ」
「へえ、すごいね。さすが!」

さらに、親や先生ばかりでなく、子供自身も自分のことを肯定的にとらえるようになっていきます。
というのも、子供も当然親が書いたものを目にするからです。
子供が低学年で、漢字が多いから分からないだろうと思っていると、大きな間違いです。
子供も自分のことが書かれていることは知っているので、とても興味があるのです。
ですから、読める部分だけでも読もうとします。
それで全部は分からなくても、大体どんなことが書かれているかは子供にも分かります。

さあ、親が取るべき戦略としてどちらがいいかは、もう明らかですね。
これからでも遅くはありません。
「うちの野菜は腐ってるよ!」と言うのはもうやめましょう。
「うちの野菜は新鮮だよ!おいしいよ!」と言うようにしましょう。
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