私が教師に成り立ての頃のことです。
私の隣のクラスの先生はベテランの先生でした。
その先生は、2時間目の後の業間と呼ばれる20分休みも25分間の昼休みも、子供たちを全員外で遊ばせていました。

体調不良の子以外は、全員です。

私は、休み時間は子供の自由時間だから、そういう強制はしたくないと考えていました。
それで、外で過ごしても教室で過ごしても良いということにしていました。
友達とおしゃべりしたい子はおしゃべりし、本を読みたい子は本を読み、絵を描きたい子は絵を描き、外で遊びたい子は外で遊べばいいと考えていました。

このごろの10年間くらいは、これら2つの考えの中間でやっています。
つまり、業間休みは全く自由にして、昼休みは全員外へ行かせています。
では、なぜ、私は、子供たちを昼休みは外へ出すようになったのでしょうか?
それは、日中に外で体を動かすことがとても大切だと気が付いたからです。
これが、子供の心身の健全な成長に欠かせないことだと気が付いたからです。

ところで、今、太陽の光を浴びることの危険性が大きく指摘されています。
オゾン層の破壊が進んでいるので、地上に届く紫外線B波の量が増大していると言われています。
それによって、皮膚ガン、白内障、免疫機能低下が引き起こされるとのことです。
ですから、私が言っていることは、時代に逆行するように思えるかもしれません。

ですが、反面、太陽の光は自律神経のリズムにとても大きな影響を与えているということも分かってきています。
日中に適度な光を浴びることで、脳が刺激されて、神経伝達物質のセロトニンが分泌されます。
それによって、自律神経の交感神経が働き、頭も体も活発になります。
それで初めて、勉強も運動もがんばれるのです。
適度な光を浴びないと、副交感神経から交感神経への切り替えがうまくいきません。
日中に交感神経がうまく働くことで、暗くなってからの副交感神経の働きもうまくいくのです。
これが人間本来の自律神経のリズムなのです。
このリズムが正しく保たれることは、心身の健康にとって不可欠です。
特に、この自律神経のリズムと睡眠との関係が今注目されています。
取り分け、成長期の子供たちにとって、良質の睡眠はとても大切だと言われています。
昼間適度な光を浴びて交感神経を働かせ、適度な運動をして体を動かしていた子は、素晴らしい眠りを得ることができます。
この素晴らしい眠りが子供にとってどれほど大切なのか、坂総合病院小児科科長の角田和彦先生は、ホームページで次のように書いています。
以下引用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ヒトは太陽が昇って明るくなると活動性が高くなる昼行性動物です。ヒトの子供たちは、昼の活動を終え太陽が沈むと眠りに入り、睡眠直後に深い眠りに入るとこの時間帯に成長ホルモンが分泌され、成長を促します。この入眠直後の深い眠りがあると、朝方になってから浅い眠りに入り、この浅い眠りのときに副腎皮質刺激ホルモンが分泌され、昼間の活動の過剰なストレスや過剰なアレルギー反応を抑えます。

以上引用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ところで、私は先程「適度な光」と書きましたが、これが一番大切だと思います。
そして、また、一番難しくもあると思います。
というのも、最初に書いたようにオゾン層の破壊により紫外線B波の量が増えていると言われているからです。
ですから、太陽の光を浴びすぎることは避けなければなりません。

特に、紫外線の量が増える春や夏は、紫外線を浴びすぎないようにしなければなりません。
着る物を工夫したり、場合によってはクリームなどを使ったりして、肌を守る必要があります。
現代では、このようなことに無頓着すぎてはいけません。
子供は紫外線の影響を大人より受けやすいと言われていますから、なおさらです。

でも、だからといって、外で子供が遊ぶことを否定しすぎていいのでしょうか?
太陽の光の良さもあるはずです。
なんといっても、人間はその誕生以来ずっと太陽の下で生きてきたのですから。
太陽に育まれてきたと言ってもいいくらいです。
ここへきて、あまりにも太陽の光を悪者にしすぎることが自然の道理に反していないかと心配です。
何か別の面で、マイナスがあるかもしれません。

先程、自律神経への影響ということに触れました。
その他にも、カルシウムの吸収に必要なビタミンD3を作るとか、ホルモン分泌の調整をするとか、様々な生理作用や免疫能力に影響を与えるとか、細胞代謝を促進するとか、いろいろな太陽の光の働きが発見されています。

もしかしたら、まだ科学が発見していないことで、太陽の光が人間に与える影響というものがあるかもしれません。
わたしは、気持ちや精神を快活にしたり、安定させたりする働きも大きいと思います。
教室で授業をしているとよくこういうことを経験します。

例えば、朝からずっと曇り空で子供たちもなんとなく元気がないというときがあります。
そんなとき、突然雲が切れて太陽の光が差してくることがあります。
すると、それまで曇っていた子供たちの顔にみるみる生気が溢れてくるのです。
つぼんでいた花が太陽の光で開くのと同じで、子供たちの顔が一気に花開くのです。
子供たちだけでなく、私自身も、サーッと気持ちが明るく快活になるのを感じます。

また、日向ぼっこの気持ちよさや癒しの効果は誰でも知っているところです。
このように、太陽はまことにありがたいものでもあるのです。

こういうわけで、私は太陽についてのジレンマを感じているのです。
紫外線は怖いけど太陽の恵みも受けたい、というジレンマです。
これは、私だけでなく、多くの人が感じているのではないかでしょうか。

そこで、現代人が太陽と上手に付き合う方法として、「適度に」ということを提案したいと思うわけです。

適度に太陽の光と付き合うことで、紫外線の害を少なくしながら太陽の恵みも受けようというわけです。
春や夏の紫外線の強いときには、きちんと紫外線対策をすることです。
服装やクリームなどの紫外線対策について、子供にも教えてやるといいでしょう。
そして、過度に皮膚を露出したり、日焼けしたりしないように言って聞かせることです。
でも、その期間中一切外での活動をしないというのでは、これまた行きすぎだと思います。
それでは、また別の問題が出てきてしまいます。

ですから、大切なのはバランスです。
何事もそうですが、行きすぎはだめです。
「適度に」というバランス感覚が、ここでも大切なのです。

ところで、私が教師に成り立ての頃は、毎年日焼けの度合いを競い合う大会を夏休み明けに学校でやっていました。
色が黒い子ほど、夏休みにたくさん水泳の練習をしたということで、褒められたものでした。
逆に、色の白い子は、努力が足りないということで叱られたりもしました。
もともと肌が地黒の子もいれば白っぽい子もいたのですから、いい加減な大会ではありました。
でも、一年中で症状をもらえるのはこの大会のときだけというわけで、これに賭けていた子もいました。
今、このような大会は行うべきではありませんが、懐かしく思い出されます。
20年前と今、隔世の感があります。

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