学校にはけっこういろいろな物が置いてあるので、毎日少しずつ持ち帰っても1週間は掛かります。
この持ち帰らせ方にも、いろいろな方法があります。
「今日は絵の具セットを持って帰りなさい」というように、一斉指導する方法もあります。
「自分で計画を立てて少しずつ持って帰りなさい」というように、個人に任せる方法もあります。
私はというと、この2つの中間でバランスを取っています。
全部指示して持ち帰らせていては、自分で考えて決める力が付きません。
でも、全部を個人に任せると、とんでもないことになります。
クラスにはいろいろな子がいますから、計画的に持ち帰ることのできない子が必ず何人かいます。
こういう子を放っておくと、最後の日には、悲惨な光景を目にすることになります。
10年くらい前に、すごい姿を見たことがあります。
ランドセルを背負って、両手に荷物を持って、首に荷物を掛けて、腰に荷物を巻いて歩いていました。
おまけに、ランドセルのフックにもいろいろな物が掛かっていて、その掛かっている物にもまた何かを掛けてありました。
5年生くらいの子でしたが、特に恥ずかしがっている感じでもありませんでした。
それどころか、「どうだ、すごいだろ~」という感じで、周りの子たちにいろいろ説明をしていました。
これだけの物をどうやって一度に持てるようにしたかを、得々としゃべっていました。
もしかしたら、なかなかの人物になっているのかも知れません。
ところで、みなさんのお子さんも、学年末にいろいろな物を持ち帰ってくると思います。
みなさんは、それらをどう扱っていますか?
扱い方一つで、子供のやる気を引き出すこともできますし、やる気をなくさせることもできるのです。
ポイントを一言で言えば、教育的な配慮をもって扱うということです。
それらをどう扱えば子供がやる気を持つか、という視点で考えてみることをお勧めします。
他の物と同じように、ただ単に収納や片付けという視点だけで考えないようにしてください。
例えば、図工で描いた絵はどうしたらいいでしょうか?
その絵をもとに話に花が咲くようにしてやれるといいですね。
まず、その絵のいいところや工夫の見られるところを、褒めてやってください。
そして、その絵について子供が話したくなるようにしてやってください。
子供の絵には、いろいろなお話が込められていることが多いので、それを引き出してやってください。
大したことないと思われた絵でも、子供の話を聞くとだんだん面白く見えてくるものです。
決して絵をけなすようなことを言ってはいけません。
「絵は下手だね」とか「もっとうまく描けないの?」などと言ってはいけません。
大人はときどき冗談めかしてこういうことを言うことがありますが、冗談でもそんなことを言えば、子供は自信をなくします。
大人から見ればどんなに下手な絵でも、その子は一生懸命描いたのです。
何か1つでもいいので、いい点を見つけて褒めてやってください。
絵に自信がなかった子でも、そうかな、もしかしたらうまいのかな、と思うようになります。
中には、子供が持ち帰った絵を、待ってましたとばかりにゴミに出してしまう家もあるようです。
これでは、子供を伸ばすことはできません。
褒めて褒めて褒めまくって、絵が大好きな子にしてやってください。
また、子供の絵は心の成長を示す足跡のようなものです。
一生で、そのときしか描けないものなのです。
大切に取っておけば成長の記録にもなり、いい思い出にもなると思います。
また、親が自分の作品を大切にとって置いてくれるということ自体が、子供にとってはうれしいことなのです。
それは自分が大切にされていることの証でもあるからです。
どうしても、処分しなくてはならない場合は、写真を撮ったりデジタルデータにしたりしておくといいでしょう。
工作なども、写真に撮ったりデジタルデータにしたりしておくことをお勧めします。
作文や日記なども、ぜひ褒める材料にして欲しいと思います。
作文や日記を持って帰った子に親が言うことは、だいたい次の2つと相場が決まっています。
「習った漢字をしっかり使いなさい」
「字が雑だね。もっと丁寧な字で書けないの?」
これでは、子供を伸ばすことはできません。
多少のことには目をつむって、いいところを見つけて褒めることが、子供を伸ばすコツです。
それに、作文や日記で大切なのは中身です。
字の書き方より、中身が大切なのです。
まず、中身をしっかり読んでください。
そして、書いてある中身に共感してやってください。
けんかで嫌な思いをしたことが書いてあれば、それに共感してやってください。
がんばったことが書いてあれば、がんばって偉かったねと言ってやってください。
作文や日記の中身を題材に、話に花を咲かせてやってください。
まさか、読みもしないという方はいらっしゃいませんよね?
そして、次に大切なのは、書き方を褒めることです。
書き方で褒めるポイントは、主に次の3つです。
1 様子を詳しく書いているところ
2 心の中を詳しく書いているところ
3 自分なりに工夫して書いているところ
様子を詳しく書いているところを見つけて、褒めてやってください。
次のように言ってやるのです。
・様子が目に浮かぶように書けているね
・様子が詳しく書けていて、とてもよく分かるよ
・会話が書いてあるから、文が生き生きしているね
心の中を詳しく書いてあるところを見つけて、褒めてやってください。
・自分の気持ちが詳しく書けているね
・そのとき考えたことがよく分かるね
自分なりに工夫して書いてあるところを見つけて、褒めてやってください。
・この書き方は、自分の工夫があっていいね
・この書き方は、喩え方がうまいね
我が子の作文や日記を読んで、これらの3つのポイントが弱いなと感じるかも知れません。我が子は作文や日記が苦手なのかな、と感じるかも知れません。
でも、そんなことは、絶対に気付かれてはいけません。
ちょっとでもいいところを見つけて、ひたすら褒めることです。
こういうものは、マルやバツが決まっているテストとは違うのですから、褒めようと思えばいくらでも褒められるのです。
褒め続けていれば、だんだんそのようになってきます。
反対に、「お前は作文は下手だな」などと一度でも言おうものなら、もうだめです。
内心思っても、絶対に言ってはいけません。
嘘でもいいから、褒めてやってください。
しかも、嘘と思われないように上手に褒めてやってください。
授業で使った教科書、ノート、ドリル類なども、教育的な配慮をもって扱ってください。
このときの扱い方一つで、教科書、ノート、ドリルに対する次の年の子供の態度も決定されるのです。
いい加減に扱えば、子供もいい加減に扱うようになります。
丁寧に扱えば、子供も丁寧に扱うようになります。
教科書を見ながら、1年の勉強を一緒に振り返ってみるといいですね。
算数なら、例えば次のように振り返ってみてください。
今年は分数を勉強したんだね。
3桁割る2桁の割り算もできるようになったんだね。
国語なら、次のようになります。
新しい漢字をいくつ覚えたか数えてみようか。
どの物語が一番好きだった?
理科なら、次のようになります。
水を蒸発させる実験のことを、楽しそうに話してくれたよね。
初めてアルコールランプを使ったとき、どうだった?
社会なら、次のようになります。
ゴミの勉強で、分別の仕方を調べたね。
県のことを調べて、新聞にまとめたね。
ノートやドリルなどをめくりながら、がんばったところを探してやってください。
ノートの中で子供がたくさん書いているところ、字が丁寧に書いてあるところ、丸がいっぱい付いているところ、などがそうです。
先生の赤ペンが入っているところも、そうです。
そういうところを見つけて、話題にしたり褒めてやったりしてください。
その勉強でがんばったときのことを、子供ももう一度思い出すはずです。
ノートに自分の考えを書いて、勇気を出して発表したことを思い出すかも知れません。
勉強中に先生に褒められたことを思い出すかも知れません。
健康診断の記録を使って成長を自覚させることもできます。
1年の最初の身長と体重を最後のそれと比べるのです。
できたら、1年生の入学時と比べてみるといいですね。
子供は、身長が伸びたり体重が増えたりするのがうれしいものです。
何センチ伸びて何センチ重くなったかを計算して、数字で示すことで、自分の成長を自覚することができるのです。
これはけっこう子供が喜びますので、ぜひやってみてください。
学校でもらったがんばり賞、皆出席賞、賞状やミニ賞状なども大切にしてやってください。
しばらくどこかに飾ってやるといいでしょう。
飾ることで、子供はその価値を再認識するものです。
最後に1つ提案ですが、がんばったことが思い出せるように、記念写真を撮っておくといいと思います。
例えば、がんばった絵や工作や習字を持って写真を撮るのです。
ドリルやノートでもいいし、がんばり賞や皆出席賞でもいいです。
1年間の自主勉ノートを積み上げて、自分も入れて写真を撮るのもいいですね。
このような楽しい振り返りの時間を持つことが、来年への意欲につながります。
子供が持ち帰ったものをそのまましまったり捨てたりしてしまうのではなく、きちんと価値付けてやることが大切です。
そうです。
大切なのは、価値付けてやるということです。
それが、次の年のやる気につながるのです。
親野智可等の本
遊びながら楽しく勉強
親野智可等の講演
取材、執筆、お仕事のご依頼
親野智可等のお薦め
親野智可等のHP