家庭訪問に行った先で、とてもいいお話を伺うことができました。
A君は、車が大好きで、車博士です。
車の名前をよく知っていて、そこら辺を走っている車の名前をどんどん言えます。
ミニカーもたくさん持っています。
このA君は、1年生で引き算を習ったとき、最初よく分からなかったそうです。

足し算は人間にとって自然な数の操作なのですが、引き算はひとひねりした操作なのです。
ですから、1年生の時に、最初、引き算の意味がうまく飲み込めない子はけっこういるのです。
そのとき、お母さんはひらめきました。
ミニカーを使ってやってみたらどうだろうかと。
そこで、次のような問題を作ってやらせてみたそうです。

駐車場に車が8台止まっていました。
3台出ていきました。
残りは何台でしょうか?

このような問題を作って、ミニカーを並べながら考えさせたそうです。
そうすると、たちどころにできたそうです。
お菓子の数や花の数ではできなかったのに、車にした途端に分かったのです。
それで、お母さん自身もびっくりしたと言っていました。

このような問題もやってみたそうです。
駐車場に赤い車が9台、白い車が5台止まっていました。
違いは何台でしょうか?
 
実は、引き算には2種類合って、先程の引き算は残りを求める問題で、こちらは差を求める問題です。
この差を求める問題の方が、子供たちにとって少し難しいのです。
でも、車を使ったら、こちらもたちどころにできたそうです。

次に、足し算や引き算が入り交じった問題を作ってやらせました。
車以外の時は、混乱していたのに、車を使ったら難なくできたそうです。
お母さんは、またまた驚いたそうです。

今、そのA君は、2年生になりました。
お母さんは、今も、車を使った問題をA君のノートに書いてやっています。
それを、A君は毎日大喜びで解いています。
そして、次の日に学校で私に見せてくれます。

授業中に私が黒板に問題を書くとき、「先生の問題」というのを省略して「先問」書いています。
それで、その子はそれをまねして「お母さんの問題」を「母問」と呼んでいます。
それを子供たちに紹介したら、ほかにもやる子が出てきました。
「父問」「兄問」「姉問」「爺問」「婆問」なども登場しました。
「婆問」より「祖母問」と呼んだ方がいいという意見も出ました。
いろいろあって、まるで、ポケモンの名前のようだと面白がる子もいます。

ところで、そのお母さんはいつも実に工夫して問題を作っています。

たとえば、次のような問題です。
お母さんは、スカイラインGT-RVで出かけました。
家からスーパーまでが5キロで、そこから親戚までが18キロでした。
親戚から家までが17キロでした。
全部で何キロ走ったでしょうか?

今日の運動会に、お父さんたちがハイエースワゴン スーパーカスタムリミテッドターボ 3MRで来ました。
9時32分について2時10分まで見ていました。
運動会を見ていた時間はどれくらいでしょうか?

○○君は、アコードワゴン Vixでお菓子を買いに行きました。
最初、お財布に305円入っていたけど、帰りには87円しかありませんでした。
お菓子をいくら買ったでしょうか?

このように、あの手この手です。
よくこれだけお母さんが車を知っているなと思うくらい、いろいろな名前が出てきます。
きっと、子供のためにいろいろ調べて書いているのでしょうね。
とにかく、車の名前が出てくれば喜んでやってくれるのですから、お母さんも一生懸命です。
この子の自主勉は、もう、半年近く続いています。
ノートも3冊目くらいになったと思います。
この自主勉ノートは、もう、親子のすばらしい宝物といっていいでしょう。
お母さんが、「今日はもう遅いから自主勉はやめよう」と言っても、問題を書いてもらうまで引き下がらないそうです。

ところで、お母さんはこれを続けながらも、はたしてこういう方法に効果があるのだろうかという疑問も持っているようです。
先日、電話で話していて、そういうようなことを言ってらっしゃいました。

「本当にためになっているのでしょうか?」

それで、私は答えました。
なってますとも!
文章題の力をつけるには最高の方法だと思いますよ。
好きなものだからイメージが浮かびやすいでしょ。
それで、いろいろなパターンの問題がどんどん解けるんですよ。
こうやってたくさん解いているうちに、文章題を解くコツがだんだん分かってくるんです。
それと、お母さんが言ってやってください、「○○は、算数が好きだね」って。
「○○は勉強が好きだね」「○○はがんばり屋さんだね」って。
そうすると、だんだん本人もそう思うようになってきますから。
ぼくは算数が好きなんだ、勉強が好きなんだ、がんばり屋なんだという気持ちになることが、すごく大切なんです。
これが本人の自信になって、いろいろな面でのやる気につながっていくんです。
それに、まず、こういう親子で一緒に勉強する時間そのものがすばらしい時間だと思います。
本当にいい触れ合いになりますし、子供としては親の愛情を実感する時間でもあると思います。
こういう時間こそが人生の最高の時間ではないでしょうか。
後になってみると、「ああ、楽しい時間だったな」って、必ず思うはずですよ。 
だから、味わいながら楽しみながらやっていくといいと思いますよ。

実は、A君は、この算数の自主勉以外に書き取りの自主勉もやっています。
それも喜々としてやっています。
なぜなら、彼の書き取りは車の名前を書くというものだからです。
書き取りのノートに、次のような車の名前を毎日喜んで書いているのです。
ニッサン サファリ 4.8  グランロードリミテッド 
ベンツ Eクラスステーションワゴン E500ワゴンアバンギャルド
私も、1学期の最初のころにこれを見たときは、書き取りのノートには漢字を書いてほしいなと内心思ったこともありました。
でも、しばらくすると、2年生くらいだとカタカナの練習もかなり必要だということに気が付きました。
というのも、2年生くらいですと、まだまだカタカナはすらすらと書けないからです。
そんな中で、彼はカタカナがとても得意なのです。
それに、このごろは、車の名前を書くついでに漢字の練習もやってくるようになりました。

このように車に関連していろいろな自主勉を工夫している親子を見て、私はいろいろ教えられました。
そして、私なりに、これをもっと広げたり深めたりする方法について考えてみました。
たとえば、次のようなことが考えられると思います。

車やその会社の名前をアルファベットで書く。
TOYOTA、NISSAN、HONDA、MATUDA、Mercedes-Benz、Audi
これは、ローマ字や外国語の勉強につながっていくはずです。

車の名前の由来を調べる
たとえば、「アリスト ARISTO」は、英語で「最高の、優秀な」という意味です。
「フォレスターFORESTER」は、「森に住む人、森を育てる人」という意味です。
「オルティア ORTHIA」は、ギリシャ神話の中の子供を守る女神の名前です。

日本や世界の地図に車の工場のあるところを書き込む
車の工場は日本中、そして、世界中にあります。
それを調べて、日本地図や世界地図に書き込んでいくのです。
これだけで、県名や国名や都市名などを覚えることができます。
大好きな車に関連づけて覚えるので、よく覚えることができるはずです。

図鑑やカタログで、もっともっとたくさんの車の名前を覚える
大人が手助けして、図鑑やカタログを増やしてやってください。
そうすると、子供はどんどん名前を覚えます。
大人が手助けしてやることで、普通に車が好きな子のレベルをはるかに超えていくことができます。
名前をたくさん覚えるのは、どんな分野でもまず第一番に大切なことです。
例えば、植物学者は植物の名前を何百、何千と知っています。
そして、普通の人には見分けが付かないものでも、きちんと見分けることができます。
つまり、名前をたくさん覚えるのは、勉強や学問の第一歩でもあるのです。
そして、車の名前を覚えまくった子は、他の分野でも同じようなことができます。
こういうことは、すべて応用が利くのです。
広げ方、深め方、極め方を体験として体で身に付けることができるからです。

車の工場を見学する
多くの自動車工場が見学を受け付けています。
巧みに工具を操る人間やいろいろなロボットの動きは、大人が見ても興味深いものです。
学校でも、小学5年生の工業の勉強で、自動車工場に社会見学に行くところがたくさんあります。

「自動車のひみつ」という学習漫画を読ませる
この学習漫画には、初歩的なことからかなり高度なことまでが、とても分かりやすく出ています。
理科的なことや工学的なことにも、触れることができます。

工作で車を作りまくる
粘土、紙、木材、ブロックなど、いろいろな材料で、車を作りまくるのも楽しいですね。
私の甥っ子も、小さいときいろいろな物で車を作っていました。
創造力アップには、とてもいいものです。

思いつくままに挙げてきましたが、この他にも、まだまだ、いろいろなことが考えられると思います。
そして、これは、なにも車に限ったことではないのです。
どんなものでも、その気になればできるのです。
犬が好きな子なら、犬について極めたり、それを生かした楽勉で力を付けることができるのです
虫が好きな子は虫で、植物が好きな子は植物で、サッカーが好きな子はサッカーで、絵が好きな子は絵で。
なんでもいいのです。
その子の好きなこと、得意なこと、それを今よりもっと極めさせてやってください。
そして、同時に、それを生かした楽勉で力を付けてやってください。
そのような毎日は、とても楽しいものです。
しかも、楽しみながらいろいろな力を付けていくこともできるのです。


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