私は、1995年から日記をつけ始めました。
教師生活12年目の正月からです。
きっかけは、尊敬する先輩教師S先生から、十年日記のすばらしさを聞いたことです。

十年日記というのは、10年分が1冊の日記帳に書けるようになっています。
そして、同じページの中に10年間の同じ日が記録できるのです。
ですから、何年かつけていると、前の年やその前の年の今日は何をしていたかがすぐに分かるのです。

S先生は、この十年日記は生活にも仕事にも大いに役立つと教えてくれました。
そして、そのためには、事実をしっかり記録することが大切だと教えてくれました。
私は、さっそくS先生のまねをして、十年日記をつけ始めました。

そして、日記をつける習慣は今も続いています。
ただ、今は、パソコンで日記をつけています。
メールマガジンを書いたり本の原稿を書いたりすることが多いので、パソコンで日記をつける方が私にとって便利だからです。

では、私が考える効果的な日記のつけ方とその効用を紹介したいと思います。
これは、子育て中の方々にも大いに役立つものだと思います。

まず、私は、事実や気がついたことを記録するようにしています。
後で役立つと思われることは、できるだけ記録しておきます。
というのも、私は、日記を生活や仕事に役立てたいと考えているからです。

そして、文章にこだわらずに、できるだけキーワードで済ませるようにしています。
文章にこだわると面倒ですし、そのちょっとした面倒さが続かなくなる原因になるからです。

教師のときには、たとえば次のようなことを記録しておきました。

バス、荷物背負ったまま、全員いたら載せる

これを文章化すると次のようになります。
社会見学でバスに載せるときは、まず、荷物を背負ったまま座らせる。
人数を数えて全員いると確認できたら、荷物を棚に載せさせる。
それでないと、人数確認がやりにくい。

50m、靴、準備運動、ダッシュ

50メートル走は、走りやすい靴と走りにくい靴ではタイムがかなり違ってくる。
走る前の入念な準備運動で体を温めておくとタイムがよくなる。
50メートルは短いので、スタートダッシュの正否がタイムにかなり響く。

条幅、限界枚数は学年の数と同じ

書き初め大会で条幅という長い大きな紙に書くときの枚数の限界は、次の通り。
3年で3枚、4年で4枚、5年で5枚、6年で6枚。
それ以上書かせても、集中力が続かない。

配膳、カレーこぼしたらカレーの子が拭く

給食の配膳のとき、食管から何かをよそう当番の子がこぼしたら、その子が後で拭くようにする。
そうすれば、よそうときに気を付けてこぼさなくなる。
別の子が拭くようにすると、よそう子が気を付けなくなる。

このようなことを記録しておくと、いろいろと役に立ちます。
次に同じ状況になったときに、前回よりうまく事を運ぶことができます。
つまり、改善ができるのです。
そして、同じ失敗を繰り返さなくなります。

この日記の付け方は、みなさんの生活や仕事でも大いに役立つものだと思います。
たとえば、親としては次のようなことを記録するといいと思います。

お正月に、誰にいくらお年玉をあげたかということを書いておきます。
そうすると、次の年のお正月にそれが役に立ちます。
1年もすると、去年いくらあげたかなど忘れてしまっているからです。
また、親なら、子どもが誰にいくらもらったかを書いておくのもいいと思います。

「運動会の日にうっかり重い靴で登校させてしまって、徒競走で遅くなってしまった」ということを書いておきます。
そうすると、次の年は走りやすい靴で登校させることができます。

「兄弟を比較して弟を褒めたら、お兄ちゃんの方が泣いてしまった」ということを書いておきます。
そうすると、次からはそういうほめ方をしなくなります。

「我が子に「バカたれ」と言ったら、それを覚えてしまって、友達に「バカたれ」と言っていた」ということを書いておきます。
そうすると、次からは自分の言葉遣いに気を付けます。

「2人一緒にいるところで兄弟げんかの理由を聞いたら、お互いの主張が平行線のままだった。まずは、1人ずつ別々に話を聞けばよかった」ということを書いておきます。
そうすると、次からは兄弟げんかの理由をはっきりさせることができるようになります。

メールマガジンで子育てのいいヒントを読んだら、それを書いておきます。
そうすると、ときどき思い出して、実行できるようになります。

このようなことを記録しておくと、後で役に立ちます。
十年日記でしたら、前の年やその前の年の同じ日に書いたものをすぐ読み返せるので、おさらいになります。
パソコン日記でしたら、ときどき思い出したい記録には、その冒頭に「改善」とか「参考」と書いておけばいいのです。
そうすれば、「改善」という言葉で検索を書ければ、すぐにそういう記録を拾い出して読み返すことができます。
このようにしていると、だんだん自分の生活や仕事が改善されてくるのです。
同じ失敗を繰り返さなくてすむようになるのが、大きいのです。

さて、先ほど、後で役立ちそうなことを記録することをお薦めしました。
次に、お薦めしたいのは、子どもを褒めたことを記録することです。
たとえば、私は、次のようなことを書いていました。
「褒めた、○○君、無人トイレで全部整頓、養教より」

あるとき、○○君がトイレのスリッパを全部きれいに並べてくれていたのを、養護教諭が見ていたのです。
誰かが見ているからでなく、誰もいないのに自分から進んで整頓していたのです。
たまたまトイレ点検に来た養護教諭が見つけて、私にも連絡してくれたのです。

私は、もちろん○○君を褒めました。
誰もいなくてもスリッパの整頓をしてくれるなんて、本当にうれしいことです。
そして、このように記録しておくと、ときどきそのことを思い出すことができます。
毎日いろいろなことが起きるので、こんなにうれしいことでも、ともすれば記憶の彼方に流れていってしまいます。
でも、日記に書いておけば、読み返すこともできます。
「褒めた」で検索すれば、このような記録が全部出てくるのです。
「○○君」で検索すれば、その子に関した記録が全部出てくるのです。

そして、本人も忘れかけたころ、もう一度話題にして、しみじみ褒めることができるのです。
「そういえば、こういうこともあったね。○○君は人が見ていないところでもみんなの役に立つことを進んでできる子だね。保健の先生も感心していたよ」
また、親子面談のときに伝えることもできます。

私は、親も我が子を褒めた記録をつけておくといいと思います。
たとえば、親としては次のようなことを記録するといいと思います。

「褒めた、○子、雨降り、○男の服着替え」
お姉ちゃんの○子さんが、雨でぬれた○男の服を着替えさせてくれたのです。
そのままだったら風邪を引くところだったので、とても助かりました。
それで、「○子ありがとう」と大いに褒めたのです。

「褒めた、○男、一輪車、何度も何度も、根性」
転んでも転んでも何度でも一輪車に挑戦する○男の姿に、我が子ながら心打たれたのです。

「褒めた、○子、月末漢字テスト、自分で目標」
月末漢字テストに向けて、自分で目標を持って進んで漢字の勉強をした○子さんを褒めたのです。

「褒めた、○男、父の靴、泥取り」
お父さんの靴に泥が付いているのに○男君が気がついて、さりげなく拭いて取ってくれたのです。

こういうことを書いておくと、子どものいい表れが消えることなくずっと残っていきます。
読み返せば、いつでも子どものいい表れを思い出すことができます。
そのときの自分がうれしかった気持ちも思い出すことができます。
これは、その子へのいいイメージを親自身の心の中に形作るのに大いに役立ちます。

また、そのことをいつまでもしみじみと褒め続けることもできます。
「○男、テーブルの上を拭いておいてくれてありがとう。年中さんのときにも、自分で気付いてお父さんの靴をきれいにしてくれたね。○男は気が利く子で、お母さんうれしいよ。ありがとう」
「○子、音楽会のオーでションに向けてピアノの練習がんばってるね。○子は、自分で目標を作ってそれに向けてがんばるからすごいね。月末漢字テストのときもそうだったね。あのときもそう思ったよ」

これは、子どもが自分へのいいイメージを形作るのに大いに役立ちます。
なんといっても、親が具体的な証拠を挙げて証明してくれているのですから。

私は、これが本当の子育てであり、本当の教育だと思うのです。
つまり、子どものいいところを見つけて、それを価値づけて褒めてやることです。
そして、褒め続けることで自分へのいいイメージを持てるようにしてやることです。

そうすれば、子どもは自分のいいイメージに合った考え方や感じ方をするようになります。
当然、行動もそうなります。
そうなれば、がみがみ言わなくてもすむのです。
がみがみ言わなければならないのは、上のようなことをしていないからです。

私は、子どもを褒め続け、子どもがいいイメージを持てるようにしてやることこそが教育だと思います。
そのために、日記はとてもいいツールになると思います。
ぜひ、「子どもを褒め続けるための日記」という観点から日記をつけてみてください。

さて、ここまで、記録しておくといいものとして2つ紹介しました。
後で役立ちそうなことと子どもを褒めたことです。
次に、3つ目として、自分の精神状態を書いておくことをお勧めします。

私は、現役教師をしていたあるとき、自分の感情コントロールが最大の課題だと気が付きました。
というのも、感情的な叱り方をして全てを台無しにするということを繰り返していたからです。
何日も何日もかけて子どもたちとの信頼関係を築くよう努めておきながら、ある日突然感情的に叱ってしまうことが何回もありました。
そして、その度に、子どもたちの内面で私への評価が下がるのに気が付きました。

それで、私は、感情的に叱らないようにするにはどうしたらいいか考えました。
そして、自分の心の動きをよく意識していることにしました。
自分の心の動きに気づいていれば、感情的な爆発をしなくてもすむのです。
自分がイライラしてきたなと思ったら、意識的に子どもと離れたり、休憩したりすることもできます。
自分がイライラしてきたのに気が付かないままだと、それが感情的な爆発になってしまうのです。
ですから、普段から、自分の心の動きに気付くようにしていることがとても大切なのです。

それと同時に、私は、自分がどういうときにイライラしたり不機嫌になったりするかを日記に記録することにしたのです。

「イライラ、会議の原稿提出5時まで、まだ半分でプレッシャー」
このときは、職員会議で提案する原稿の締切が5時までだったのに、まだ半分しかできていなかったのです。
それで、朝から気持ちが落ち着かなかったのです。

「イライラ、体育の集合時刻バラバラ、時間差が8分も」
このときは、外でやる体育の授業に後れてくる子がたくさんいたのでした。
時間通りに来て待っている子と遅れてくる子の差が8分もあったので、不機嫌になったのでした。

「イライラ、朝からどんより、蒸し暑い、太陽サッと出てサッと明るく、現金」
このときは、朝からどんよりした天気でおまけに蒸し暑かったのでイライラしていたのです。
それで雲が晴れて太陽がサッと出てきたら、自分の気持ちもサッと明るくなったのでした。
このあまりにも現金な変化に、我ながら驚いたことを覚えています。

このように記録していく中で、だんだん自分がどんなときにイライラしたり不機嫌になったりするか分かってきました。
情けない話ではありますが、自分が天気にかなり左右されることが、はっきり分かってきました。

特に、湿度が高いとき、もうすぐ雨が降りそうなのに降らないとき、どんよりと曇っているとき、蒸し暑いときなどは、危なくなります。
つまり、不快指数が高いときです。

それと、仕事に追われて忙しいとき、人間関係がうまくいっていないとき、生活が乱れているとき、寝不足のとき、空腹のときなども、危なくなります。

問題があるのに、何も具体的な手立てを講じられないでいるときに、危なくなります。
何か1つでも具体的な手立てを講じることで、自分が落ち着くことも分かりました。

子どもたちの望ましくない表れが1つや2つくらいならいいのですが、3つも4つも重なってくると、危なくなります。
また、今まで挙げてきた危ない状態を引き起こすものがいくつか重なってくると、かなり危なくなります。

たとえば、不快指数が高い日で、午後5時までに提出の書類が未完成だというときに、子どもの望ましくない表れがたくさん見られると、ものすごく危ない状態になります。
このような危ない条件がいくつか重なったときは、本当に要注意です。

私は、普段から自分の心の動きに気付くように努めて、さらに自分の精神状態を日記に記録することで、このようなことに気付きました。
そして、自分がどんなときにイライラしたり不機嫌になったりするか分かってくると、事前に自分に警戒警報を出すことができるようになりました。

朝から不快指数が高いときなどは、「今日は気をつけよう」「今日は、自分の心をよく見ていよう」と自分に警戒警報を出します。
「こういう日は、特に心の動きに気付いていよう。イライラモードに気をつけよう」
「今日は特にリラックスして明るくいこう。朝の会の先生の話で、親父ギャグを決めよう」
「今日は太陽が出ないから、自分が子どもたちの太陽になろう」
「今日は、特に、子どものいいところを見つけてほめるようにしよう」

このように、仕事に追われて忙しいとき、人間関係がうまくいっていないとき、生活が乱れているとき、寝不足のとき、空腹のときなど、自分にとって危ない条件があるときは、自分に警戒警報を出すといいのです。

私は、これを子育て中の親たちにもお勧めしたいと思います。
普段から自分の心の動きに気付くように努めて、さらに自分の精神状態を日記に記録することを強くお勧めします。

というのも、親の感情的な爆発ほど子どもにとってつらく悲しいものはないからです。
親のイライラや不機嫌をぶつけられる子どもは、本当にかわいそうです。
感情的に叱りつけたり叩いたりすることほど、子どもを傷つけるものはありません。
そうやって育てられると、人間不信などの精神的なトラウマを負うことになるのです。

教師や親は、自分の感情に気付いてそれをコントロールする力が絶対的に必要です。
なぜなら、相手は自分よりはるかに弱い子どもだからです。
相手が自分と対等の大人ならとても言えないようなことも、平気で、または、うっかり、または、ついつい、言ってしまいます。
そして、言った方はすっきりしますが、言われた方は本当に嫌な気がするのです。

さて、ここまで、日記に記録しておくといいものを3つ紹介しました。
後で役立ちそうなこと、子どもを褒めたこと、自分の精神状態のことの3つです。
日記は、工夫次第で、子育てのすばらしいパートナーになってくれるのです。
もちろん、仕事の、そして、人生のパートナーにもなってくれます。
みなさんも、ぜひ、いろいろと工夫してみてください。

後、いくつか日記に書いておくといいことを羅列的に挙げておきます。

何をしてやったら子どもが喜んだかということ
喜んで食べた料理
子どもが成長したと実感したこと
子どもが親にしてくれたこと
子どもの意外な面を発見したこと
子どものおもしろい言動
子どものかわいい言動

みなさんは、3日前どんなことがあったか覚えていますか?