みなさんは、わが子の学力を上げるために、また、しつけをするために、いろいろなことをやっていると思います。
口で「勉強しなさい」などと言うだけでは、絶対に子どもは勉強しませんからね。
口先だけの指示や命令ほど効果の少ないものは、めったにありません。
それで、私は、親の具体的な手立てや合理的な工夫がとても大切だと、あちらこちらで言っているわけです。

今回は、ほとんどの人がやったことのない方法について紹介したいと思います。

でも、既にその効果を知ってやっている人も世間にはいるのです。
講演ではこの話をしてきたので、聴いてくれた人はかなりやっているようです。
それは、写真を使って子どもの学力を上げたり、叱らないでうまくしつけをしたりする方法です。

最初は、学力を上げる方法です。
まず、子どもがテストで100点満点を取ったときに写真を撮ってやってください。
満面の笑みで100点満点の写真を持つ姿を、写真に撮るのです。
もちろん1枚と言わず、何枚持って写ってもいいのです。
ある程度たまってから、それらを全部持って写ってもいいのです。

そうしたら、撮った写真を大きく引き伸ばして額に入れ、目に付くところに貼ってください。
自分の部屋、リビング、トイレなど、一日一回は必ず目にするところがいいでしょう。
その写真を見るたびに、100点満点を取ったときのうれしさを思い出します。
そのたびに、また100点満点を取りたいという気持ちを高めることができます。

また、その写真からは、「あなたは100点満点が取れるのだ」「あなたは勉強ができるのだ」という無言のメッセージが絶えず発せられることになります。
毎日毎日見ているうちに、そのメッセージが心の中に入っていきます。
すると、だんだんそう思えるようになっていくものです。
自分に対するイメージ、つまり自己イメージがだんだんよくなっていくのです。
建物を作るとき青写真をもとに作るのと一緒で、人間も自己イメージという青写真をもとに自分を作っていくのです。
ですから、子どもの自己イメージをよくしてやれば、本人もだんだんそうなっていきます。

この他には、次のようなのもいいと思います。
すごく一生懸命集中して勉強している姿を写真に撮って貼ってやります。
その写真からは、「自分は集中して勉強できるのだ」というメッセージを受け取ることになります。

たくさん計算練習をした場合は、その全部のノートを積み重ねて、一緒に撮ります。
その写真からは、「自分は勉強の努力家なのだ」というメッセージを受け取ることになります。
書き取りノート、自主勉強ノート、問題集、日記帳、学校のプリントの束、塾のプリントの束、通信学習の教材などなど、いろいろなものが考えられます。

そして、これは、芸術的教科、運動、スポーツ、習い事など、勉強以外でもいろいろな分野で大きな効果があります。

すばらしい粘土作品を作ったとき、満足のいく絵を描けたとき、ブロックで大作を作ったとき、そういうときも写真に撮って貼ってやりましょう。
その作品だけのアップでもいいですし、一緒に撮ってもいいのです。
ピアノを一生懸命練習している姿、音楽会でエレクトーンを弾いている晴れ姿、縄跳びの綾跳びができるようになった記念、柔道大会で試合をしている真剣な姿、サッカーのリフティングの練習、野球の素振り、水泳大会のトロフィーを持っているところ、折り紙、あやとり、読書しているところ、習字を書いているところ、うまく書けた習字の作品を持っているところ、書き初めコンクールの授賞式でにっこりしているところ、などなど、機会はいくらでもあります。

そのような子どもの輝いている姿を写真に撮り、大きく伸ばして貼って、いつも見られるようにしてやってください。
そのときのうれしさ、楽しさ、気持ち良さ、達成感、成就感、それをいつまでも覚えていることができます。
それらは、全て子どもに自信を与え、人生の大きなエネルギー源になります。

実は、どんな人にもこのように輝いている瞬間は必ずあるのです。
それをどの程度自分の意識に残していけるかが、人生を決めるのです。
人生で成功する人は、そのような瞬間を自分の中で反芻する習慣がある人です。
牛は、一度飲み込んだ食べ物をまた口に戻して噛み直します。
そのように自分の輝いている姿を絶えず反芻する習慣を持っている人は、自分に対するいいイメージを持てるようになるのです。

親は、子どもがこのような習慣を持てるように、手助けしてやるといいと思います。
いい習慣とは、洗面や歯磨きだけではないのです。
この習慣は、子どもに身に付けさせるべきあらゆる習慣の中で、最も大切なものの1つです。
そのために、この写真を活用する方法を、ぜひ、実行して欲しいと思います。

次は、写真を使って叱らないでしつける方法です。
例えば、玄関先の靴をそろえさせるためにどうしたらいいでしょうか?
「また、靴がバラバラじゃないの!何度言ったら整頓するの!」などと言わずに済ませる工夫はないものでしょうか?
それには、靴がそろってきれいになっている状態を写真に撮って、大きく引き延ばして玄関に貼っておくといいのです。
または、子どもが靴をそろえながらこちらを見てピースしている姿でもいいでしょう。
これらの写真を見て、「あ、そうだった」と気が付いて靴をそろえるようになる・・・かも知れません。
「そろえた方がいいとは思っているのだけれど、ついつい忘れてしまう」という子には、かなり効き目があります。
そして、ときどき、次のような話をしてください。
「この写真を見たら、靴をそろえようね。玄関は家の顔だからね」
「この頃、靴の整頓がよくなってきたね。写真の効果があったのかな?うれしいな。お母さん頭いいでしょ?」

靴以外にも、整頓関係ではいろいろなことでこの方法が使えます。
机の上を整頓している姿、または、きちんと整頓できているところ。
子ども部屋を整頓している姿、または、きちんと整頓できているところ。
本棚を整頓している姿、または、きちんと整頓できているところ。
脱いだ服をたたんでいる姿、または、きちんとたたまれたところ。

整頓関係以外にも、いろいろな生活習慣をしつけるためにこの方法が使えます。

食後の歯磨きをしている姿。
登校前に髪の毛をとかしている姿。
学校からのお便りを、自分から親に手渡している姿。
次の日のカバンの仕度をしている姿。

さらに、自分の仕事にやる気を持たせるのにも使えます。
お風呂洗いの仕事をがんばっている姿。
食後にお皿を一生懸命洗っている姿。
玄関を掃いている姿、または、部屋を掃除機できれいにしている姿。
取り入れたたくさんの洗濯物をせっせとたたんでいる姿。

このように、学力やその他の能力の向上のためにも、しつけのためにも、写真はとても効果があります。
でも、写真を貼れば後は何もしなくていいというわけではありません。
靴の整頓のところで、「この写真を見たら、靴をそろえようね。玄関は家の顔だからね」とか「この頃、靴の整頓がよくなってきたね。写真の効果があったのかな?うれしいな。お母さん頭いいでしょ?」などの話をするといい、と言ったことを思いだしてください。

このように、写真をきっかけにそのことを話題にしていくと、より大きな効果があるのです。
写真は、親がそのことを思い出すためのきっかけとしても、そこにあるのです。
写真は、親自身が子どもにどんなことを願っているのかを常に覚えているためにも、そこあるのです。
風呂洗いの写真を見れば、「そうだった。わが子に風呂洗いで自信をつけさせたいのだった。また、話題にしてほめてやろう」と思い出すはずです。
ぜひ、写真をきっかけに親自身の関心を維持し続け、話題にし続け、ほめ続けてください。
「写真が貼ってあるのに、なんでできないの!」などという方向にしないでください。

また、ずっと同じ写真では効果が薄くなりますので、ときどき替えることも大切です。
「さあ、今度の写真は今までのより効果があるかな?」などと、子どもにアピールして楽しんでください。
一枚貼っておけば永久に効果があって、その後親は何もしなくていいなどと思わないでください。
教育に関することは、なんでもそうです。
どんな方法も、一度やっておけばそれでいいというものはないのです。
一度ほめればいいとか、一度触れ合いがあればいいとかではなく、絶えず更新し続けていくことが大切なのです。

最後に、ぜひ貼って欲しい写真があります。
1つ目は、にっこりと満面の笑みのアップ写真、または、大笑いしている顔のアップ写真です。
この写真からは、次のようなメッセージを受け取ることができます。
「生きていることは楽しい」「自分は明るくて元気いっぱいだ」「自分の笑顔は素敵だ」「笑顔って気持ちがいい」「笑顔は楽しい」「いつも笑顔でいたい」

2つ目は、優しく微笑んでいる顔のアップ写真です。
この写真からは、次のようなメッセージを受け取ることができます。
「自分は優しい子だ」「人に優しくすることはいいことだ」「これからもみんなに優しい子でいたい」

3つ目は、元気いっぱいで強くたくましく、活力がみなぎっている様子が感じられる写真です。

この写真からは、次のようなメッセージを受け取ることができます。
「自分は元気いっぱいで健康的だ」「強くてたくましい子だ」「エネルギーがいっぱいで何でもがんばれるぞ」「いやなことがあっても吹き飛ばすぞ」「いじめなんかに負けないぞ」

4つ目は、思い切りおかしな顔をしている写真です。
にらめっこで相手を笑わすためにするような、へんてこな顔です。
この写真からは、次のようなメッセージを受け取ることができます。
「自分は面白い子だ」「自分は人を笑わせることが好きだ」「人を笑わせることは楽しい」

5つ目は、少し斜めの角度から撮った考え深げな顔の写真です。
教科書や図鑑によく出ている偉人の写真のようなイメージです。
少し斜めの角度から撮るのがコツです。
この写真からは、次のようなメッセージを受け取ることができます。
「自分は知的な存在だ」「自分には賢い智恵がある」「ものごとを深く考えることができる」「落ち着いて正しく判断したり行動したりすることができる」

こういう写真を毎日見ていると、だんだんそうなっていきます。
ぜひ、実行してください。

もちろん、今までここに書いたものの全部はとても無理です。
でも、全く実行しないのでは読んだ意味がありません。