ここまで、親のストレスを子供にぶつけないための方法をいろいろ書いてきました。
その最後として、みなさんにいくつかの発想転換をお薦めしたいと思います。


まず、1つ目として、「親が子どもを完成品にする必要はない」ということを強調したいと思います。


親は、わが子が大人になるまでにできるだけ立派にしてやりたいと思っていますが、そんなに急ぐ必要はないのです。
 

なぜなら、わが子の成長は大人になった時点で止まるわけではないからです。
それどころか、人間というものは、大人になってからの方がはるかに大きな成長をするものなのです。
 

まず、時間的にも、子供時代より大人時代の方がはるかに長いという事実があります。
かりに20才までを子供時代とすれば、子供時代はわずか20年間です。
その後の時間はすべて大人時代です。
つまり、大人時代は子供時代の3倍以上もあるのです。
 

そして、大人になってからの成長には、子供のときのそれに比べて勝るとも劣らないものがあります。もちろん、言語の習得や楽器の演奏など、子供時代のほうが効率のいいものもあります。
でも、大人になってからのほうが身につきやすいものもまた多いのです。
 

たとえば、この連載の4回目にも書きましたように、苦手なことを直すのは大人になってからのほうがうまくいきます。
また、いろいろな分野の勉強についても、大人になって目的意識がしっかりしたときのほうがはるかに身につきやすいのです。
 

それに、大人として日々の生活や仕事をする中で、多種多様なひとたちとつき合う中で、いろいろな経験をする中で、ひとは能力的にも精神的にも絶えず成長していきます。
  

みなさん自身を振り返って、20才の頃と今の自分を比べてみてください。
20才を過ぎてからわかったことやできるようになったことが、かなり多いことに気づくはずです。
「20才の頃など、何もわかっていなかった」と感じるはずです。
そして、この先さらに成長し続けるのも間違いないことです。
 

つまり、人生は成長の過程そのものです。
ですから、なにも子供時代に親がすべてを完成させてやる必要はないのです。
 

親が教えられないことを、そのほかのひとがみんなで教えてくれます。
親がいくらがんばってもできなかったことを、その子の恋人があっという間にいともたやすく成し遂げるかも知れません。
 

親が教えられないことを、その子の将来の伴侶、子供、友達、ライバル、先輩、後輩、上司、部下、同僚、客、いろいろなひとがすべて教えてくれます。
ときには、その子の敵が大切なことを教えてくれるかも知れません。
それらすべての、学びの過程そのものが人生なのです。