ここまで、5回にわたって、親のストレスを子供にぶつけないための方法を書いてきました。
というのも、これはそれほどまでに大切なことだからです。
さらに、これについて、あと2つ大切な方法を紹介したいと思います。


1つめは、子育ての初心に返ることです。
子育て中のみなさん、ぜひ思い出してください。
子供が生まれたとき、どんなことを感じましたか?
 

「なんて愛おしいんだろう」「うまれてくれて、ありがとう」そういう気持ちでいっぱいだったのではないでしょうか?
そのときは、子供に多くのことを望んだり求めたりしてはいなかったはずです。
 

それが、今ではどうでしょう?


「進んで勉強するようになってほしい」
「テストでいい点を取れる子になってほしい」
「字を丁寧に書いてほしい」
「なんでもしっかりやってほしい」
「はきはきした子になってほしい」


などと、子供に求めるものがいつの間にか数限りなく増えてしまっているのではないでしょうか?

 
普通、これらは親の願いと言われています。
でも、本当のところ、これらは親の欲なのです。
願いという美しい言葉で言うと本質が見えなくなってしまいますが、実のところ、親の欲なのです。
 

子供のありのままを受け入れずにもっともっとと求める気持ちは、欲以外のなにものでもありません。
しかも、子供という自分以外の相手に求めるのですから、自分自身に求めるときよりも始末が悪いのです。
 

これらの欲は、親の経験や価値観に基づいたものであり、子供自身の内面から出てきたものではありません。
ひとが自分の価値観に沿ったあるべき姿を自分自身に求めるなら、それは向上心の表れでありすばらしいことです。
 

でも、それを相手に求めるなら、それは押しつけです。
たとえ、わが子と言えども、それは許されることではありません。
なぜなら、ひとは誰もが自分自身の人生を生きるために生まれてきたからです。
たとえ親といえども、価値観や生き方を押しつけることはできないのです。
 

それに、ひとが相手に(自分の価値観による)あるべき姿を求めると、必ず自分の思い通りにならないという現実にぶつかります。
その上、相手のたいへんさが理解できないという状態にもなります。
 

現に、みなさんの中にもこの状態になっている人がたくさんいるのではないでしょうか?
自分のことなら、自分のたいへんさがわかります。
でも、相手のたいへんさはわからないものなのです。
ここに親の欲の危険性があるのです。