前回、ほめ方の1つとして、「その子がよくやっていることや熱中していることをほめる」ことが大切だと書きました。
もう1つの大切なほめ方は、「親がしつけたいことを取り敢えずほめる」ことです。


ここで、このコラムの5回目に紹介した「叱らないシステム」を思い出してください。
片づけが苦手な子には「片づけタイム」、歯を磨き忘れる子には「お箸と一緒に歯ブラシを食卓に並べておく」などの方法を紹介しました。
 

これによって子供の部屋が少しでも片づいたり、子供が歯磨きを忘れないようになったら大いにほめてあげてください。
 

「片づけが上手になったね」「自分で歯を磨けるようになったね」とほめられれば、子供はその気になります。
本当は、「叱らないシステム」のおかげなのですが、それでもいいのです。
ほめられることで、子供はやる気になるのですから。
 

いろいろな「叱らないシステム」でほんの少しでもできるようになったら、すかさずほめてください。これは、大人が子供をほめられるようにするシステムでもあるのです。
つまり、「叱らないシステム」は「ほめるシステム」でもあるのです。
 

でも、もっと言えば、本当は、特に変化がなくても「取り敢えずほめる」ということでもいいのです。実際問題として、「叱らないシステム」がうまくつくれないとか、それを考えている時間がないなどということもあると思います。
 

そういうときは、特に変化がなくても「片づけが上手になってきたね」とか、「4年生になって、しっかりしてきたね」などとほめてもいいのです。
明らかにお世辞とわかるものでは困りますが、そうでなければ、子供はだんだんその気になってくるものなのです。
 

別の例でいえば、たとえばお兄ちゃんが弟を泣かせたというとき、「また、弟を泣かせて!なんで、もっとお兄ちゃんらしくできないの?まったく、いつもいつも!」などと叱ってしまいがちだと思います。
もちろん、その場でやめさせることは必要ですが、必要以上に叱りつけるのは逆効果です。
 

その場では、必要以上のことは言わないで、その代わり、「これをほめてしつけよう」と決意するのです。
そして、ほめようと意識していると、2,3日の間に必ずそういう機会がやってきます。たとえば、朝、

家を出るとき、お兄ちゃんが弟の靴を靴箱から出してやったとします。
そしたら、すかさず、「お兄ちゃん、優しいね。弟思いだね」とか「いつも弟に優しくしてくれて、ありがとう」などとほめるのです。
 

親は誰でも「できたらほめよう」と思っています。
だから、なかなかほめられないのです。
できなくても「取り敢えずほめる」ことが大事です。
「できたらほめる」のではなく、「ほめたらできる」でいった方がはるかにうまくいくのです。