教科書を声に出して読む音読が、宿題として毎日出されているクラスはたくさんあると思います。
これは、宿題として一番よく出されるものの1つです。
でも、この宿題は、どうしてもマンネリ化していい加減になりがちです。
子どもだけでなく親のほうもそうなりがちです。

プリントや漢字の書き取りなら、やったかどうかが形になって残ります。
つまり、これらは次の日に出さなければならないので、やらないわけにはいかないのです。
でも、音読は形に残らない宿題ですから、本当にやったかどうかわからないという部分が常にあります。

ですから、先生たちは本読みカード(または、音読カード)をつくるのです。
親たちに聞いてもらって、宿題をやった証拠としてサインや判子やコメントなどをもらうのです。
でも、中には、親子でうまく処理してしまう場合もあるようです。

親「本読みしたの?」
子「したよ」
親「ホントにした?いつ読んだの?」
子「さっき帰ってきてすぐ読んだじゃん」
親「上手に読めたの?」
子「読めた、読めた」
親「じゃあ、本読みカード持って来な」
子「はい、よろしく」
親「『上手に読めました』・・・と」

こういうことが度重なると、子どもの音読力は伸びません。
そこで、今回は、音読を楽しく、しかも効果的に練習する方法を紹介したいと思います。
マンネリになりがちな家庭での音読ですが、いろいろな工夫をしたり変化をつけたりしながら前向きに取り組むことが大切です。
そうすれば、楽しみながら力をつけるためのとてもいい時間にすることができるのです。

■追い読み
(この追い読みと次の部分完成法については、03年11月1日配信のメルマガでも少し触れましたが、大切なのでもう一度詳しく書きます)

これは、親が読んだ後を追いかけるように読む方法です。
たとえば、次のようになります。
親「むかしむかし」
子「むかしむかし」
親「あるところに」
子「あるところに」
親「じいさまとばあさまがありましたと」
子「じいさまとばあさまがありましたと」

慣れてきたら、一度に読むところをだんだん長くします。
親「むかしむかし、あるところに」
子「むかしむかし、あるところに」

親「むかしむかし、あるところに、じいさまとばあさまがありましたと」
子「むかしむかし、あるところに、じいさまとばあさまがありましたと」

これは、音読が苦手な子のための練習方法です。
一字一字拾うように読む「拾い読み」や、すぐにつかえてしまう「つかえ読み」を直すのに効果があります。

また、とくに音読が苦手な子の場合は、そのとき音読する部分の一番最初の文字を親が指で示してやると読みやすくなります。
つまり、「むかしむかし」と音読するときは、「む」という文字の横に人さし指を置いてやるのです。

■部分完成法
先ほどの「追い読み」で、まず1つめの文を上手に読めるようにすることが大事です。
1つめの文が上手に読めるようになったら、2つめの文を同じように練習します。
そして、1つめと2つめの文を続けて上手に読めるようにします。
このように一部分が完成したら次に進むので、部分完成法というのです。

このやり方は、自力で読める範囲が少しずつ広がっていくので、子どもにとって達成感があります。
そして、自信もつきます。

ところで、宿題が「『かさこじぞう』の音読を1回」という形で出ていることもあると思います。
これを額面通りに受け取ると、部分完成法はできません。
でも、そこは親の裁量で柔軟に考えればいいのです。
宿題と同じ分くらいの練習をすればいい、と考えてください。

堅く考えて、「文章の全部を1回音読した上で、さらに追い読みで練習」というようにすると、練習時間が長くなりすぎます。
こうなると、苦痛に感じるだけで楽しむことができなくなってしまいます。
毎日少しずつでもいいので、楽しくやることが大事です。

■追い読みによる全文音読
もちろん、「追い読み」で全部の文章を最後まで通して読む方法もあります。
つまり、「追い読みによる全文音読」です。
文章全体の内容をつかむためには、これが有効です。
部分完成法だけやっていたら、文章全体の内容をつかむまでに何日もかかってしまいますから。

でも、「追い読みによる全文音読」だけで音読を上手にしてやることはなかなか難しいのです。
「何日経ってもすらすら読めるところがない」ということになりかねません。
ですから、2つの方法の特質を理解して、必要に応じて使い分けるようにしてください。

■一文交代読み
これは、交代で一文ずつ読む方法です。
句点、つまり「。」のところまで読んだら交代するのです。
たとえば、次のようになります。
親「むかしむかし、あるところに、じいさまとばあさまがありましたと」
子「たいそうびんぼうで、その日その日をやっとくらしておりました」

この読み方のいいところは、子どもを音読に集中させることができる点です。
というのも、相手が読むのを注意深く聞いていて、相手が読み終わったらすぐ読まなければならないからです。

■段落交代読み
これは、交代で一段落ずつ読む方法です。
各段落の最初は一字分下げることになっていますので、一字下がりのところで交代するわけです。
この読み方でも、一文交代読みと同じように、かなりの集中が求められます。

さらに、この段落交代読みのいいところは、相手に負けないよう上手に読もうという意識が自然に働く点です。
というのも、交代しながらある程度の長さを一人で読むので、お互いの読み方の上手下手がはっきりわかるからです。
親子で読むと親の読み方がお手本にもなりますし、それに負けないように上手に読みたいという意識も働くのです。

さらに、これは、子どもに段落という文章の固まりを意識させるのにも効果的です。

ただし、国語の物語文の場合は、一字下がりの場所がわかりにくいことがあります。
物語文では会話を表すカギ括弧が多く使われていますが、カギ括弧の中の2行目は一字下げるという決まりがあるのです。
それで、会話の部分が多い物語文は、一字下がりのところが多くなりすぎてどこが段落の切れ目かわかりにくいのです。

それがスリルがあっていいと考えることもできますが、かなり高度な判断力が求められるのも事実です。
説明文でしたらそういうことがないので、段落の切れ目がはっきりわかって読みやすくなります。

■役割読み
これは、親と子が役割を決めて読む方法です。
親子の2人といわず、兄弟や家族の3,4人でやるのも楽しいものです。
たとえば、物語文の「かさこじぞう」なら、次のような役割分担ができます。

アの方法(2人でやる場合)

Aさん:じいさまの言葉
Bさん:ばあさまの言葉
AさんBさん:地の文を一文交代で読む(または、2人で一緒に声を揃えて読む)

イの方法(2人でやる場合)

Aさん:じいさまとばあさまの言葉を全て読む
Bさん:地の文(言葉以外の部分)を全て読む

ウの方法(3人でやる場合)

Aさん:じいさまの言葉
Bさん:ばあさまの言葉
Cさん:地の文を全て読む

この読み方は、場面の様子や気持ちが表れるように読ませるのに向いています。
役割を決めてあるので自然にそうなるのです。
じいさまの役の子は自然にじいさまになった気持ちで読みますし、ばあさまも同じです。
「今の読み方は、じいさまのがっかりした気持ちがよく表れてるね」「ばあさまの優しさがよく出ているね」などと、大いにほめてやるといいでしょう。

■一文2回読み(一文3回読み、一文4回読み、それ以上も含む)
これは、同じ文を2回ずつ読む方法です。
誰かと交代ではなく、本人がずっと2回ずつ読むのです。
子「むかしむかし、あるところに、じいさまとばあさまがありましたと」
子「むかしむかし、あるところに、じいさまとばあさまがありましたと」
子「たいそうびんぼうで、その日その日をやっとくらしておりました」
子「たいそうびんぼうで、その日その日をやっとくらしておりました」

この読み方は、まだ十分うまく読めないときの練習法として効果があります。
1つの文を1回読んだあとすぐ同じ文をもう1回読むので、2回目は1回目よりうまく読めるのです。
これは、1人でやる「追い読み」と考えることもできます。
もちろん、3回ずつとか4回ずつにすれば、3回目や4回目はもっとうまくなります。
ですから、「部分完成法」の一種ともいえます。

これをやるときも、部分完成法のところで触れたように、「『かさこじぞう』の音読を1回」という宿題の形にこだわらないでください。
2回ずつ読むなら半分まででよしとして、次の日に残りをやるという形でいいのです。

この読み方は、音読の苦手な子に歓迎されます。
つっかえつっかえで全文を通して1回読むのは、なかなかたいへんです。
それよりも、同じ文を4回ずつ読んで全体の4分の1で終わるほうが、はるかに楽なのです。
しかも、4回目はうまくなっているのがわかりますので、達成感もあります。
やっていて楽で、実際にうまくなって、達成感があるという、とてもいい方法なのです。

こういういい方法を、世の中にもっともっと広めていきたいと思います。

■全文音読
これは、一人で全文を通して音読する方法です。
つまり、毎日の宿題で普通に行われている方法です。
これはたくさんある練習方法の1つにすぎないのですが、実際はこれしか行われていないというのが現状です。

しかも、本当はかなりレベルが高い読み方なのです。
音読が苦手な子にこればかりやらせていても、なかなかうまくなりません。
そればかりか、音読に苦手意識を持って、ますます嫌いになるだけです。
この前の段階として、少なくとも、追い読み、一文2回読み、一文交代読みなどが必要です。

■完璧読み
音読の練習が進んでかなり上手になってきたら、この完璧読みに挑戦させるといいでしょう。
これは、1回もつかえたり読み間違えたりしないで、文字通り完璧に読むというものです。
と、口で言うのは簡単ですが、実際にやってみるとかなり難しいということがわかると思います。
最初は、完璧に1ページ読めたら大したものです。

具体的には、次のようにやります。
まず、普通に全文音読を1回やります。
それでウォーミングアップができたら、いよいよ完璧読みに挑戦です。
一番最初から読み始めて、つかえたり読み間違えたりしないでどこまで読めるか挑戦するのです。

1回でもつかえたり読み間違えたりしたら、そこで終わりです。
終わったところに小さくしるしをつけておきます。
そして、「今日の挑戦はここで終わり」というようにしてもいいですし、悔しがる場合はあと何回か挑戦させてもいいでしょう。

ただし、毎回、一番最初から読み始めるのです。
続きから読むということはしないのです。
これが緊張感をもたらして、子どもは「前回ここまでだったから、今回は絶対それ以上の新記録を作りたい」という気持ちになります。

新記録達成というゲーム性を強調して、うまく盛り上げてやるのがコツです。
「第1場面クリアー」とか「p51をクリアー」などと言ってやるといいでしょう。
新記録を達成してさらに読み進めていくときなど、子どもはものすごく真剣な表情になります。
「せっかくここまでノーミスできたのだから、できるだけ遠くまで行きたい」という心理が働くからです。

こうなってくると読むほうだけでなく、聞くほうも緊張してきます。
つかえたりすると、思わず双方から「あ~っ!」という悲鳴が出てしまうくらいです。
無事に全文を完璧読みできたら、お赤飯ものです。

できたら、親も挑戦してみるといいでしょう。
そうすれば、完璧に読むのがいかに難しいかわかると思います。
どちらが遠くまで行けるか(たくさん読めるか)、親子で勝負するのもいいでしょう。
新記録というゲーム性にプラスして、勝負というゲーム性も加わるので、さらに楽しくなると思います。

上手に音読ができる子は、毎日の音読の宿題に飽きていることが多いと思います。
そういう子には、この完璧読みがおすすめです。

■暗記読み
同じ文章を何回か繰り返し音読しているうちに、子どもは暗記してしまいます。
暗記しようと思わなくても、頭に入ってしまうのです。
子どものこういう能力には、驚異的なものがあります。
大人の遠く及ばないところです。

子どもが本を見ないで暗記でやっていたら、ぜひ、ほめてやってください。
ここは大いにほめるところです。
「すごいね。もうこんなに覚えちゃったの?」とか「頭いいね~。天才だね」などと言ってやってやれば、子どもは自分の能力に自信を持つことができます。

ここで、「めんどうがらないで、ちゃんと本を出してしっかり読みなさい」などと言ってしまう人もいるのではないでしょうか。
でも、これはもったいないことです。
せっかくほめられる場面を、わざわざ叱る場面にすることはありません。

でも、親としては、子どもの暗記読みが正しくできているのか気になると思います。
そういうときは、親が教科書を見ながら聞いてやってください。
そして、間違えているところがあったら、その部分、またはそのページをもう一度本を見ながら読ませるようにするといいでしょう。

■表現読み

これは、場面の様子や気持ちが表れるように読む方法です。
つまり、朗読です。
登場人物の言葉を読むときは、その人物になったつもりで表現します。
地の文を読むときも、場面の様子や状況に応じて表現します。
これは、役割読みのところで触れたような読み方を、1人でやるのです。

ここでも、ほめることがとても大事です。
「今の読み方は、じいさまのはりきってる気持ちがよく表れてるね」「村はずれのさみしい様子がよく出てるね」などと、大いほめてやるといいでしょう。

大人の朗読については好き嫌いがあって、あまりに感情過多な表現はわざとらしくてイヤという人も多いと思います。
実は、私もその1人です。
舞台上の朗読やテレビのナレーションなどで、あまりに感情過多なものは押しつけがましく感じられます。
ほどよく抑制が効いたもののほうが、芸術的感興がわいて、私は好きです。

でも、子どもの表現読みにおいては、思い切り表現させてやればいいのです。
大切なのは、それが芸術的にいいかどうかではありません。
大切なのは、それが教育的効果があるかどうかなのです。
つまり、それが子どもの成長に役立つかどうかということです。

表現読みは、たとえば、次のような点で役立ちます。
・思い切り表現する楽しさを味わう
・自己表現への自信が育ち、日常生活でも自分を表現できるようになる
・ストレスを発散し、気持ちがすっきりする

ですから、子どもの表現読みは思い切りやらせてやってください。
そして、たくさんほめてやってください。