「滑舌がいい」とは、音声が滑らかで、しかも、1つ1つの音がしっかり聞き分けられる話し方のことです。
いい声とは、張りがあって心地よい響きのある声です。

一番いい例が、アナウンサーやナレーターの話し方(読み方)です。

テレビやラジオのアナウンサーは、かなりのスピードで話したり原稿を読んだりしても、1つ1つの音がしっかり聞き分けられます。
そして、無理に力んで大きな声を出さなくても、自然で心地よい響きのある声が出ます。
この2つの理由で、アナウンサーの声は聞きやすいのです。

アナウンサーの中には、本当に上手な人もいます。
話の中身よりも、その話し方や声に惹かれて聞き惚れることもあるくらいです。
とくに、大好きなのは元NHKの広瀬修子さんです。
広瀬修子さんの声が聞こえてくるとすぐ分かりますし、思わず聞き耳を立ててしまいます。
そして、その声を聞いているだけで、心地よくなってくるのです。

私は、教師になってからずっと人の話し方や読み方や声に興味を持ってきました。
自分の話し方や声をよくしたい、そして、それを子どもの指導にも役立てたい、こういう気持ちがあったからです。
それで、ある劇団で発声法や朗読のトレーニングを受けたこともあります。
そういうわけで、つい、この方面では注意深くなります。

アナウンサーやナレーター以外にも、いい声で滑舌よく話せる人はいます。
俳優、声優、落語家などはもちろんのこと、芸能人にもたくさんいます。
これらの仕事は、いい声で滑舌よく話すことが仕事そのものなのですから、当然といえば当然です。

でも、このほかにも、いい声で滑舌よく話せる方がうまくいく仕事はたくさんあります。
教師、保育士、管理職など、人前で話すことの多い仕事はもちろんです。
営業職、窓口業務、公務員、医師、看護師など、人と話すことの多い仕事もそうです。
これらの仕事では、口の中でもごもご言っている感じで、何を言っているのかはっきり聞き分けられないような話し方だと、業績にも響いてきます。

そして、さらに言えば、これら以外の仕事でも、また仕事以外のすべての場面でも、およそ人とコミュニケーションを取る必要がある場面ではすべて、いい声で滑舌よく話せる方がいいのです。

というのも、人が相手から受ける印象は、話の中身よりも声、話し方、表情、仕草などによって決まるといわれているからです。
いい声で滑舌よく話せれば、それだけで相手にいい印象を与えることができるのです。
つまり、明るくて、さわやかで、頭脳明晰で、仕事ができるという印象を与えることができるのです。

そして、ありがたいことに、このいい声で滑舌よく話すというのは訓練次第でかなりできるようになるものなのです。
しかも、子どもたちが宿題でよくやっている音読で、この2つが鍛えられるのです。
というわけで、その方法について書いていきたいと思います。
まず、滑舌をよくする方法です。

■はっきり読み
これは、一音一音をはっきり読む方法で、滑舌をよくするための基本中の基本です。
子どもには、「はっきり読みで読もう」「はっきりゆっくり読もう」「口をしっかり開いて読もう」「一音ずつはっきり読もう」などと言います。

そして、子どもが「ごんは、ひとりぼっちの小ぎつねで」というところを「ごんは、ひとりぼっちの小ぎつねレ」などと読んだら、次のように導きます。

「上手!とくに、「ごんは、ひとりぼっちの」までは最高にはっきり読めてて、上手だったよ」
「えへへ、上手でしょ。でも、どこがはっきりしてなかったの?」
「じゃあ、○○ちゃんの読み方をまねしてみるから、当ててね」
「うん」
「ゴンは、ひとりぼっちの小ぎつねレ」
「あっ、「小ぎつねレ」って言った」
「大当たり。じゃあ、そこに気をつけて読んでみよう」
「ごんは、ひとりぼっちの小ぎつねで」
「上手、上手、すごくはっきり読めた」
「えへん」
「じゃあ、「小ぎつねで」だけ、5回繰り返してみよう。はっきり速読みで、はやくち言葉みたいに」
「小ぎつねで、小ぎつねで、小ぎつねで、小ぎつねで、小ぎつねで」

ときには、親と子が立場を入れ替えてやるのもいいでしょう。
つまり、親が読むのを子どもが聞き、はっきり聞き取れない音を指摘させるのです。
子どもは、大喜びで張り切ってやります。
耳をダンボにして聞いてくれます。
そして、たとえば、次のようにうれしそうに指摘してくれます。
「「ふと見ると、川の中に人がいて、何かやっています」ってところが「ウと見ると、川の中に人がいて、何かアっています」って聞こえたよ」

このように、いつも指摘されるだけでなく、自分で指摘する経験をさせると効果的です。
それによって、実際はっきり聞き取れない音があるということがよくわかるからです。
その結果、一音一音をはっきり読もうという意識が高まっていくのです。

このようなことを楽しみながらやるといいでしょう。
楽しくない上にしつこくやったりすると、子どもは絶対に乗ってきません。
うまく工夫してゲーム化するのがコツです。

ゲーム化と同時に、絶対忘れてならないのは、ほめながらやるということです。
最初に上手なところをほめて、その後で問題点を指摘するという順番がいいでしょう。
しかも、ほめる方を2倍にするくらいの気持ちで臨んでください。
そうすると、子どもはうれしくなって、問題点を指摘されても素直に受け入れられるようになります。
そして、ほめ方を学ぶので、親が読んだときもほめてくれるようになります。

さらに、この発展として、ぜひ、やって欲しいことがあります。
それは、子どもの音読を録音して本人に聞かせてやることです。
先ほどのは、お互いに聞き合っての指摘でしたが、今度は自分で自分の音読を聞いて指摘するのです。
自分で自分の音読を聞くのは、とてもいい勉強になります。
自分で自分の音読を聞けば、自分の問題がどこにあるかは一目瞭然です。

■はっきり速読み(アナウンサー読み)
1つの教材ではっきり読みが上手にできるようになったら、次の段階としてはっきり速読みに挑戦するといいでしょう。
速く読んでもはっきりしているということで、これをアナウンサー読みということもあります。

はっきり読みでは、一音一音をはっきり発音するために、必然的にゆっくり読むことが必要になりました。
でも、本当に滑舌がいいというのは、ある程度速く読んでも(話しても)一音一音がはっきり聞き取れるということなのです。
このはっきり速読みが上手になると、普段の会話でも自然に滑舌よく話せるようになります。

子どもには、「「はっきり」はそのままで、少しだけ速く読もう」「はっきり速読みで読もう」「アナウンサーのようにはっきり、しかも速く読もう」などと言います。
ただ、この読み方には問題点があります。
子どもは、「速く」と言われると、そちらに気をとられてしまい「はっきり」の方がいい加減になってしまうのです。

ですから、次のようなことを話してやってください。
・いくら速く読めても、一音一音がはっきりしていなければ意味がない
・やたらに速く読む必要はなくて、今までより少し速く読めれば十分
・はっきり速読みができるようになると、いつもの会話でもはっきり話せるようになる
・滑舌がいいと、いいことがいっぱいある(冒頭で挙げた例を子ども向けに話してやってください)

ところで、このはっきり速読みは、けっこう子どもの挑戦意欲を刺激してくれるところがあります。
というのも、いつもは「ゆっくりはっきり大きな声で読みなさい」と言われることがほとんどだからです。
先生もそう言いますし、親もそう言います。
「速く読みなさい」などと言われたことはないはずです。

それで、マンネリした音読を延々と繰り返し、親子共々飽き飽きしている例がほとんどです。
ですから、「はっきり速く」がとても新鮮に感じられるのです。
普通の音読がもう十分上手に読める子にとっては、とてもチャレンジングな音読と言えます。

はっきり速読みの練習も、基本的にははっきり読みの練習と同じです。
つまり、上手なところをほめてから問題点を指摘する、親子で立場を入れ替えて聞き会う、録音して聞く、などが効果的です。
また、同じ文を5回くらい繰り返して読む「一文5回読み」や、部分を完成させていく「部分完成法」などもいいでしょう。
これらの練習では、部分的に上手になっていくのが目に見えてわかるので達成感があります。

さらに、完璧読みや暗記読みと組み合わせることで、さらにハードルを高くしてチャレンジな音読にすることもできます。
つまり、完璧読みと組み合わせて「完璧はっきり速読み」、暗記読みと組み合わせて「暗記はっきり速読み」、全部組み合わせて「完璧暗記はっきり速読み」というわけです。
ここまでできるようになると、聞いている方もほれぼれして、ついには感動します。
子どもの音読と言えども侮れない、侮れないどころか芸術的でさえある、このように感じることでしょう。

とくに、音読が得意な子には、ぜひ、ここまで挑戦させてみてください。
そのためにも、上手にほめることを心がけてください。

(なお、一文5回読み、部分完成法、完璧読み、暗記読みについては、以前配信の「親力157・マンネリになりがちな音読の宿題を楽しく効果的に続けるには?」を参照してください)

ここまで、普段の音読で滑舌をよくする方法について書いてきました。
滑舌をよくするには、このほかにも効果的な発声練習がたくさんあります。
たとえば、「ア・エ・イ・ウ・エ・オ・ア・オ」などの発声練習やはやくち言葉です。
それにつきましては、また項を改めて書きたいと思います。

次は、声をよくする方法です。

声をよくすることに関しても、いろいろな方法があります。
ここでは、家で手軽にできる方法に絞って紹介したいと思います。

声をよくすることに関して、ぜひ思い浮かべていただきたいのがお坊さんです。
毎日読経をしているお坊さんは(ここが大事です)、みんないい声です。
普通に話をするときも、張りがあって自然で心地よい響きの声が出ます。
滑舌という点ではアナウンサーに及びませんが、いい声という点では引けを取らない人がたくさんいます。

すでにおわかりと思いますが、その理由は毎日の読経です。
つまり、読経自体が、すばらしい発声練習になっているのです。
読経では次のようなことが自然に行われます。

(1)
読経では、一息で長く読むので自然に腹式呼吸になります。
腹式呼吸は、胸だけの浅い呼吸よりも息を強く吐き出せます。
吐く息が強いと、声が大きくなります。

また、腹式呼吸は体をリラックスさせますので、声帯を動かす筋肉もリラックスします。
それによって、声帯がその能力を十分発揮できるので、これもまた大きな声が出ることにつながります。

同時に、声帯を動かすの筋肉自体も鍛えられます。

(2)
声帯から出た音は、咽頭腔(喉の中)口腔(口の中)鼻腔(鼻の中)の3ヶ所の共鳴器官で響いて増幅されます。
つまり、この3つはアンプのようなものです。
読経では、腹式呼吸で体がリラックスしているのでこの共鳴もうまくいくのです。

私も経験がありますが、体をリラックスさせて読経したり「あ~~~~」と声を出したりすると、自分の体がお寺の鐘のように音を響かせているのがわかります。
そして、これを続けると体が共鳴のさせ方を覚えて、共鳴しやすい体になるのです。
つまり、アンプの性能がよくなるわけです。

上記の(1)と(2)に書いたことは、すべて腹式呼吸によって可能になります。
つまり、一言でまとめると、「声をよくするには腹式呼吸で声を出す練習が大事」ということになります。

では、実際にどうすればいいのでしょうか?
私の提案は、「その練習を毎日の音読でやろう」というものです。
具体的に言うと、お経を読むように教科書を読むのです。
つまり、「お経読み」です!
びっくりしましたか?
でも、私は大まじめなのです。

次のような順番でやります。

1,
簡単な腹式呼吸を教えます。
背筋を伸ばすいい姿勢にさせてから、次のように言います。
「息をお腹に入れてから、胸に入れなさい」(ア)
「息を吐くときは、ゆっくり長く吐きなさい」(イ)
子どもにいきなり難しいことを言ってもムリですから、取り敢えずはこれで十分です。

そして、何回か練習させます。
なお、お経読みでは、読んでいるときに自然にゆっくり長く息を吐くので、(イ)は教えなくてもだいじょうぶです。

2,
親がお手本としてお経読みをやってみせます。
「むかしむかし~あるところにじいさまとばあさまがありましたと~たいそうびんぼうで~その日その日をやっとくらしておりました~ある年の大みそか~じいさまはためいきをついて言いました~ああそのへんまでお正月さんがござらっしゃるというに~もちこのよういもできんのう~」

大人ならこの辺りまで一息で読めますが、子どもはもう少し短くなります。
息が切れたら腹式呼吸で息を吸い、また読み続けます。
文章の途中でもいいので、とにかく息が切れたところで息を吸ってください。

力んで大きな声を出すと喉を痛めますので、気をつけてください。
腹式呼吸に心がければ、(1)で書いたように自然に大きな声になります。
そして、体、とくに上半身をリラックスさせて、体中に響かせるつもりでやってください。
とくに、声を伸ばすところではしっかり響かせてください。(メルマガに書かなかったが挿入)
自分の体がお寺の鐘になったようなイメージでやるといいでしょう。
そうすれば、自然に3ヶ所の共鳴器官でうまく響くようになります。

3,
子どもにやらせます。

ほとんんどの子は、最初おもしろ半分にやると思います。
というより、大人のお経読みを聞いているときから笑い転げると思います。
こんなにおもしろい音読はないのですから、これはムリのないことであり、当たり前の反応です。
ですから、まずは一緒に楽しんでください。
その方が、リラックスできるのでうまくいきます。

なお、このお経読みの時は、滑舌のことは言わない方がいいと思います。
滑舌のことを気にしてはっきり読もうとすると、リラックスできなくなります。
ここでは、リラックスして体中に響かせることが大切です。

そして、お経読みをやるわけやその効果について話してやることも大切です。
それについては、私がここまで書いてきたことを、子どもにわかるように話せばいいと思います。
さらに、お経読みをやっていると声がよくなるので、歌も上手になるということも話してやってください。
実際、昔からお坊さんと相撲取りは歌がうまいことで有名でした。

ここまで、普段の音読で声をよくするお経読みについて書いてきました。
マンネリになりがちな音読の新しいやり方として、ぜひ楽しみながらやってみてください。
一口に音読といっても、アイデア次第でいろいろな音読を作り出すことができるということを知るだけでも、意味があります。

声をよくするには、このほかにも効果的な発声練習がたくさんあります。
たとえば、「ア~エ~イ~オ~ウ~」などの発声練習です。
それにつきましては、また項を改めて書きたいと思います。